実レポ!医療療養病棟ではたらく看護師のリアル

ナースライター ほっしー
ナースライター ほっしー
実レポ!医療療養病棟ではたらく看護師のリアル

今回より始まった「実レポ!◯◯病棟ではたらく看護師のリアル」では実際に働いてみた経験を元に、病棟の特徴や仕事内容、看護師の働き方を紹介します。気がつけば10年以上医療療養病棟で勤務してきた私の経験を元に、今回は医療療養病棟ではたらく看護師のリアルをお伝えします。
「急性期病棟と比べて、看護がゆったりとできるって聞くけど、本当?」「子育てするなら医療療養病棟は、残業が少なくていいって言われたけど実際はどうなの?」とよく聞かれたため、その謎を私の経験から紐解いてみましょう!



医療療養病棟ってゆったり看護ができて、残業が少ないの?

これ、実は本当です。
私はこれまで総合病院の中にある医療療養病棟と医療療養病棟単科の病院と2ヶ所で経験してきました。どちらの病院でも急性期病棟と比べて残業時間は少なく、日々のケアも穏やかでした。

欠勤者が多かったり、退職者が続いたりした際には、残業したり病棟の様子が少しバタつくことがあったりしますが、娘の保育園や学童のお迎えに間に合う程度でしたよ。


医療療養病棟ってゆったり看護ができて、残業が少ないの?

ではここからは、医療療養病棟がどうしてゆったり看護ができるのに、残業が少ないのか解き明かします!



医療療養病棟ってどんなところ?

医療療養病棟とは、急性期治療を終えても医療依存度が高く、自宅などへの退院が困難な患者さんが入院している病棟です。中には急性期治療のあと、特別養護老人ホームなどへの入所待ちで医療療養病棟に転院してくることもあります。

予定された転入がほとんどで、緊急入院ではないのが一般的。さらに診療報酬上、入院期間の定めがないことから長期入院が可能であるため、患者さんの入れ替わりが少ないのです。



どんな患者さんがいる?

脳血管疾患・認知症・神経難病に加え、心疾患や呼吸器疾患など患者さんの疾患はさまざまです。でも、共通して言えることは、ある程度疾患のコントロールがついた状態で転院されてくること。また患者さんの意識レベルについて、脳血管疾患の場合はJCSⅢ-100~300、神経難病の場合はJCSⅠ-1~3が多い傾向です。いずれも発語が難しいため、アイコンタクトなど非言語的コミュニケーションを用いることも少なくありません。一見難しく聞こえるかもしれませんが、通じ合えたときの嬉しさはひとしおですよ。

一方で、病状は安定しているものの何かしらの疾患を抱え、かつ高齢の患者さんが多いため、中にはDNAR(心肺蘇生は実施せず自然な形での経過をたどる)の同意を入院時に取るところも少なくありません。

ちなみに栄養経路は、経鼻または胃ろうによるものが半分以上。次に中心静脈栄養が多く、経口摂取が可能な方は3割程度です※1。数年前は中心静脈栄養の患者さんが多い病院が多かったのですが、ここ数回の診療報酬改定で厳格化され、経口摂取が求められているのが現状です。



看護師の配置は?

施設基準による看護配置は20:1。すなわち1人の看護師が20人の患者さんを受け持つことです。この数字を聞いて「え??受け持ち人数、多いよ……」と思った方がいるのでは?



看護師の配置は?

確かに数字だけを聞くと、急性期病棟の7:1や10:1に比べて多く感じるでしょう。しかし入院患者さんは、急性期治療を終えたとはいえ、医療処置があるため自宅での療養が難しい方です。そのため、急性期病棟のような検査や処置・手術はほとんどありません。また、夜勤に関しては1病棟あたり看護師と看護補助で2名以上配置(夜勤看護加算算定の場合は3名以上)するよう規定されています。つまり病棟によっては、看護師1名と看護補助1名という配置もあり得るのです。

ここは、看護師経験の長さや夜勤の慣れ具合によって「看護師1人でも全然問題ない!」という方と「看護師1人の夜勤なんて、無理だわ……」と考える方に分かれるところ。だから異動や転職で検討中の場合は、希望先の夜勤体制についてしっかり確認しましょう。あくまでも最低基準のため、中には看護師2名以上を配置している病棟もあります。



看護のやりがいは……?

医療療養病棟での看護師の役割は「治療している患者さんの看護」ではなく「患者さんが少しでも安楽な状態で生活できるような看護」です。決して派手な医療処置はないけれども、患者さんの尊厳を第一に考え、この環境で少しでも苦痛なく過ごしてもらうために看護としてできることはなんだろう……と考え、ケアできる。これこそが本来の看護の醍醐味だと思っています。



ゆったり看護ができるのに、残業が少ない理由は……

ここまでで、なんとなく残業が少ない理由の検討がついたのではないでしょうか?まとめるとこんな感じです。


1. 緊急入院が少なく、予定入院もさほど多くない。
2. 急性期治療を終え疾患のコントロールがついた状態で転院してくるため、病態変化が少ない。すなわち急変が少ない。
3. 急性期病棟と違い「治療」よりも「生活の援助」がメインのため、指示変更が少ない。

急性期病棟では医師の指示が頻繁に変更されたり、患者さんの容体が急変したりするため、計画通りに業務やケアが進まないことが多いでしょう。しかし医療療養病棟ではそれらが少ないため「計画どおりに看護やケアが進まない……だから今日も残業。」ということが少ないのです。



こんな方にオススメ

● 患者さんとじっくり関わりたい方
医療療養型病棟では、長い時間を患者さんと共に過ごします。一人ひとりの患者さんに寄り添い、心の支えになることができます。

● 患者さんとのアイコンタクトやボディランゲージを楽しめる方
言葉でのコミュニケーションが難しい方が多いため、アイコンタクトやボディランゲージなど非言語的コミュニケーションがポイント!ちょっとした表情や動作の変化に気づけたり通じ合えたりすると、より一層、医療療養型病棟での勤務が楽しくなります。

● チームワークを大切にできる方
看護師だけでなく、介護士や医療ソーシャルワーカー、リハビリスタッフなど「さまざまな職種がいかに連携できるか」が重要です。

● 患者さんのケアが好きな方
患者さんの生活の質を向上させるために、どのようなケアができるかを考え、実践することに喜びを感じる方にはぴったりです。

● 柔軟な働き方を求める方
残業が少なく、規則正しい勤務が可能な療養型病棟。ワークライフバランスを保ちやすいため、子育てや介護をしている方、習い事をしている方など、勤務後の時間を有意義に使えますね!



まとめ

医療療養病棟の看護について、患者さんの様子や施設基準、残業の有無など、私自身の経験も踏まえて説明しました。

実は私、急性期病棟から医療療養病棟へ異動になった当初、戸惑ったのです。なぜなら、これまで自分が実践してきた看護とは時間の流れが違いすぎたからです。けれども「患者さんにとっての最善を考えてケアを提供する」点はどんな環境であっても「看護」として変わらないと今は思います。

医療療養病棟での看護の良さを感じて、挑戦してみたいと思ってくれる方が1人でもいたら嬉しいです。


※1参考:日本慢性期医療協会「One Day 調査 認知症患者の状態に関する調査“平成26年7月15日”における入院患者の状態集計結果まとめ」



~ライタープロフィール~

【ほっしー】ナースLab認定ライター
看護師歴20年以上。国立系大学病院にはじまり、総合病院、民間中小規模病院、訪問看護とさまざまな医療機能の病院などでの勤務歴あり。
現在看護師をしながら、Instagramでの発信活動と、看護師ライターとしても活動中。

看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」


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