大学病院での11年から学んだキャリア術

ナースライター 野田裕貴
ナースライター 野田裕貴
大学病院での11年から学んだキャリア術

多くの働き方を選べる看護師にとって、キャリアの悩みはつきません。私は初めて就職した地元の大学病院で、11年間働いてきました。そのなかで、病院を代表する役割を与えられ、学生に講義をしたり、海外の病院視察に行ったり、貴重な体験をしてきました。今回は、このように恵まれた環境になった方法と経験談についてお伝えします。これからのキャリアに悩む方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

1.1点集中でひたすら取り組む


大学病院での11年間を振り返り、一番評価されたことは看護研究でした。当時は、大学の准教授に研究サポートをしていただきながら指導を受け、3年間のうち学会発表を3回、論文投稿を1回しました。

勉強することがただ楽しく、休みの日はもちろん、夜勤入りや夜勤明けでも関係なく研究を続けていました。無我夢中で取り組んできた結果、看護部や他部署の上司から「研究を頑張っている男性看護師」と覚えてもらえるようになりました。

1つのことに徹底して取り組むことで、周囲から評価されるという経験をしました。

学会発表

2.組織のニーズを知る

看護研究に力を注いだことで、上司に認めてもらう以外にも良い結果がありました。

それは、「研究の発表数を増やす」という看護部の目標に貢献したという実績が認められたことです。結果的に給料も増えました。この経験から、組織に貢献することは良い評価を得るための近道だと知りました。もちろん評価が全てではありませんが、何かをしようとする時には自分がどう見られているかが問われます。

例えば、認定看護師資格を取得するための学校には、上司からの推薦書が必要なことがあります。

いざ自分が動き出そうとする場面では、それまで築いてきたものがプラスに働いてくれるはずです。そのためにも、自分が所属する組織が何を求めているのか、普段からアンテナを張っておくことが大切です。



3.経験がもたらす成長

研究以外でも、病棟内のマニュアル・パンフレット作成、委員会などを積極的に取り組んできました。そんな仕事の様子が組織から評価されるようになると、役職が無いにも関わらず多くの役割を与えてもらえるようになりました。

病院附属の学校講義や、院内で10人だけというプロジェクトメンバーにも抜擢されました。また、病院の代表に選ばれてロサンゼルスの病院視察に行き、海外の医療現場を自分の目で見ることもできました。

それらの貴重な経験は、私の大きな財産になっています。もちろん、与えられた役割が大変なこともありました。人前で話すことが増え、慣れない資料づくりに追われることも。

ただ振り返ってみると、困難な課題が私を大きく成長させてくれていました。単純なスキルアップだけでなく、組織の中でどのように期待されて、どのように行動していくべきか。自分のこと、組織のことを広い視野で考えられるようになっていきました。

ここで私が学んだのは、とにかく多くのことを経験する大切さです。実際に体験することが多ければ多いほど、様々な角度から物事を考えられるようになり、成長につながっていきます。


視察先の海外の病院

4.行動で示し、発信する

「成果を出して上司から評価されなければ、大切な経験を積むことはできないのでしょうか?」いえ、そんなことはありません。自分から発信することで、結果に結びつくことがあります。

私には「言葉が現実になる」という忘れられないエピソードがあります。当時、緩和ケア病棟に異動希望を出していました。しかし、緩和ケア病棟で働きたいというスタッフが多く、なかなか希望が通らない状況でした。異動を強く願っていたので、セミナーや学会に積極的に参加して、緩和ケアで働きたいということを周りに話していました。

ある時、参加した学会に偶然、他部署の認定看護師の先輩がいました。その先輩と一緒に学会を回りながら、緩和ケアについて熱弁。すると後日、「野田君は学会でも緩和ケアに関する発表をずっと熱心に聞いていました。異動になれば一生懸命頑張ってくれると思います」と、看護部長に伝えてくれていたのです。その後、異動が決定。このことが決定的な異動理由ではありませんが、知らないところで私のことを推薦してくれたという事実に感動しました。

自分がしたいことを発信して行動すれば、誰かが応援してくれる。ありふれたセリフですが、実際に私の身に起こったことで、その言葉の意味を実感できました。



5.キャリアプランは長期的に

私は、キャリアについて反省していることがあります。それは長期的なプランを立てなかったことです。

新人の時、師長から「5年先のことを考えて行動しなさい」と何度も言われていました。それでも将来のことを真剣に考えることはできませんでした。研究が楽しいから研究をする、緩和ケアに興味があるから異動する。今思えば、やりたいことを発信していたとは言え、どれも目先のことしか見ていなかったかもしれません。

キャリアを考えることは人生を考えることと同じだと、私は考えています。仕事によって働き方やライフスタイル、場合によっては住む場所さえも変わってしまうことがあります。

様々な経験から分かったことですが、もっと早くに考えておくべきだったと反省しています。将来のことを考える時には、ぜひ長期的な目標を立ててみてください。



6.興味あることから始めてみる

「何がしたいのか分からない時はどうすればよいのでしょうか?」。そんな時は、興味があることから始めてみてください。例えば、新たな資格を取得してみるのも1つの手です。一言で資格と言っても、その種類はさまざまです。診療看護師や専門・認定看護師のように学校に通う必要があるものから、短期間の研修で取得できる資格まで、数え始めたらキリがありません。

他にも、仕事に幅広く使えるスキルを磨くという方法もあります。例えば、パソコンスキルやコミュニケーション技術、プレゼン能力などは努力で身につけられるものです。このようなスキルは、看護だけでなくさまざまな場面で活用できます。明確な目標が見つからない時には、いろいろなことにチャレンジする方法を考えてみましょう。



7.結果につながらなくても当たり前の精神

チャレンジする時に1つ注意するべきことがあります。それは、結果につながらないかもしれないということです。

やり始めたことに挫折してしまったり、身につけたスキルを使う機会がなかったりすることがあります。勉強するならせめて、その時間と労力に見合うだけの成果は欲しいですよね。

ただ損しないことばかり考えていると、何も行動できなくなってしまいます。私の場合ですが、ケアマネージャーの資格を取ったり、ボールペン字を習ってみたり、時間とお金をかけても仕事に直結しなかったことがたくさんあります。

自分で考えて動いたことなので、後悔はしていません。すぐに結果を追い求めるのではなく、行動に起こすことが大切だと考えています。



8.まとめ

キャリアを考える時には、時間もエネルギーも必要です。いつかは考えないといけないとわかっていても、大変なことはどうしても後回しにしたくなりますよね。

ただこれからの長い人生、キャリアを考えるのはとても大切なことです。具体的なプランが決まっていなくても、今からできることはあります。自分の将来のために、ぜひ何か行動してみてくださいね。



~ライタープロフィール~

【野田裕貴】ナースLab認定ライター
大学病院で11年勤務し、血液内科、緩和ケア、ICUを経験。新しい働き方にチャレンジするために、看護師ライターへ転身。現在はWEBサイトへの執筆、看護大学の非常勤教員、老人保健施設の夜勤を兼任するパラレルワーカー。多くの人の最期に関わってきた経験から、人生や命について情報発信するメディアを運営中。

URL:livesmedia.net


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