1.飛沫感染予防策におけるサージカルマスクの役割

サージカルマスクは基本的に飛沫感染予防に用いられます。
飛沫感染は会話や咳、くしゃみによって、口から飛び散る細かい水滴(飛沫)の中に病気の原因となる細菌やウィルス等の病原体が含まれていた場合、感受性のある人の粘膜から侵入することによっておこる感染で、飛沫核の大きさは5μm以上、距離は1~2mで落下します。よってサージカルマスクには最低でも5μm以上の飛沫に対する防護性が求められていると言えます。
2.細菌ろ過効率 BFE(Bacterial Filtration Efficiency)とは
細菌ろ過効率BFE(Bacterial Filtration Efficiency)とは3μmのエアゾール化した黄色ブドウ球菌をマスクの素材に透過させた場合の濾過効率を示しています。医療用マスクでは国際規格であるASTMや日本の規格であるJISにおいても≧95%が要求されます。
飛沫感染予防策として用いられるサージカルマスクは対象が飛沫核5μm以上となりますので、3μmの飛沫に対する試験で数値が高ければ効果が期待されます。
細菌濾過効率(Bacterial Filtration Efficiency)


3.微粒子ろ過効率 PFE(Particle Filtration Efficiency)とは
0.1μmのポリエチレンラテックス球形粒子の濾過効率を示しています。
医療用マスクでは細菌ろ過効率と同様に95%以上の性能が要求されます。
PM2.5等、浮遊する微粒子への対策指標として求められる事が多いためマスクの外側の防護性の指標として用いられます。また、試験粒子がウィルスの大きさとほぼ同等(0.1μm)の為、空気中を浮遊するウィルスに対しての指標としても用いられます。
微粒子濾過効率(Particle Filtration Efficiency)


4.医療用マスクは「99%カット」とはパッケージに表示できない
よくマスクのパッケージに「99%カットフィルター」等の記載がしている製品があります。
実は、99%カットと記載されているものは医療用マスク(サージカルマスク)ではないことを示しています。
医療用マスクであれば国際規格のASTMでもJISでもパッケージに当該マスクのレベルを図示するようになっています。たとえ実測値が99%以上であったとしてもレベル2,3の規格値である98%以上と記載することはできません。医療用マスクでは試験の回数も決められており基準に適合したものが合格いたします。
それ以外のマスクでは複数回試験をした中で最も良い数値だけを記載することも可能です。
実際99%以上と記載されたマスクでも100万回試験を行えば98.99%が出る可能性もあります。
一定レベル以上のフィルター性能であれば正しく隙間なくつけることの方が重要です。
JIS T 9001パッケージの例

ASTMF2100のパッケージの例

まとめ
これからますます需要が高くなるマスク。感染対策としてはきちんとした医療用マスクであれば一定のフィルター性能は担保されていますので数値も重要ですが、それ以上に重要なのはフィット性です。
レベル3のサージカルマスクでも隙間だらけであれば効果は失われてしまいます。
是非、ご自分の顔の形に合ったフィットするマスクを選択して正しく着用して頂ければと思います。
ライタープロフィール
【石鞍信哉】
A.R.メディコム・インク・アジア・リミテッド(メディコムジャパン)学術部所属。
「Pride in Protection」をかかげる感染管理のグローバルカンパニーの社員として、日々製品の適正使用や正しい感染管理の啓発のためにミナー活動を行っている。趣味は昔はバイクや釣りなど。今は・・・ほぼ無趣味です。