あれ?モニターのSpO2数値が下がっている!急いで患者さんのところに行くと酸素マスクがまた外れている……。そんな困った経験はありませんか?間違った対処によっては、トラブルを招いてしまい、適切な酸素投与ができなくなります。安全に安楽に酸素マスクが装着できるように工夫するポイントをご紹介します。
目次
1.酸素マスクの不快感
① ゴム紐がきつい
酸素マスクを密着しようとしたり、ズレないようにしていると、だんだんゴム紐をきつく締めてしまうことがあります。
酸素マスクやゴム紐が皮膚を圧迫することで、患者さんは痛みを感じて、酸素マスクを外してしまい、さらにゴム紐をキツく締めている状況を見かけます。
酸素マスクやゴム紐の圧迫により皮膚トラブルを招き、医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)が発生してしまいます。
② ゴム紐の位置が悪い
酸素マスクによる医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の好発部位として、鼻根、頬、顎、耳介があります。
特に、ゴム紐が耳介に密着することで潰瘍を形成することがあります。そのため、耳介にゴム紐が密着することを防ぐ必要があります。
③ 酸素マスクの素材が固い
酸素マスクの部分はポリ塩化ビニル(PVC)でできています。この素材は、空気や紫外線などにより、徐々に劣化することで、もともとの柔らかい素材が固くなります。
酸素マスクが固くなることで、患者さんは不快感から酸素マスクを外す原因になることがあります。
2.対処法
① ゴム紐を適切に使用する
酸素マスクの固定のためのゴム紐は、キツく締めないように注意しましょう。
医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の好発部位である鼻根、頬、顎、耳介に発赤や疼痛がないか確認します。
耳介にゴム紐が当たらないように設計されたオープンフェイスマスクなどのように、適切な装着方法を理解して使用しましょう。
② 伸縮包帯を使う
ゴム紐自体がキツく感じる場合、ゴム紐の代わりに伸縮包帯を使用することも可能です。オープンフェイスマスクなど、伸縮包帯を通すスリットがあります。
③ 保護材を使う
スキントラブルが起きやすい場合は、予防のための皮膚保護材(クッションドレッシング材など)を使用します。
皮膚保護材により皮膚の変化が確認できないため、定期的に皮膚保護材を除去して皮膚の観察やスキンケアを行います。
④ 酸素マスクを新しくする
劣化し固くなった酸素マスクに不快感が強い場合は、患者さんの状況に応じて、新しい酸素マスクに交換します。
まとめ
今回は、酸素マスクを外されて困った時の対処法について紹介しました。皆さんの使用されている酸素マスクの使用説明書も参考にしてください。意外と大切なことが書かれているかもしれません。
当たり前に使っている酸素マスクについて、興味を持ってもらえたら嬉しいです。
ライタープロフィール
【中澤由紀子】
子どもと福井県に移住し、慢性呼吸器疾患看護認定看護師を取得。急性期病棟勤務や医療的ケア研修講師などを経験。
得意なことは寝ること、苦手なことは片づけと料理。