なぜ腎臓病患者さんにロキソニンはダメなの?

ナースライター 杉本和仁
ナースライター 杉本和仁
なぜ腎臓病患者さんにロキソニンはダメなの?

古くから腎臓病患者さんの疼痛コントロールでは、ロキソニンは避けられてきた薬です。しかし、その理由について説明することはできますか?また、ロキソニンは腎臓病患者さんだけでなく高齢患者さんに使用するときも注意が必要な薬です。今回は、腎臓病患者さんにロキソニンが推奨されていない理由や高齢患者さんに対するロキソニン使用時のリスク評価についてご紹介します。


1.腎臓病患者さんにロキソニンが推奨されない理由

ロキソニンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類され腎臓で排泄される薬です。NSAIDsは薬剤性腎障害を引き起こす原因薬剤の第一位でもあります。


NSAIDsが腎障害を引き起こす理由は、血管拡張作用のあるプロスタグランジンの産生を抑制し、糸球体血流量を減少させるからです。NSAIDsが原因で発症する腎障害の特徴は多くが数日から数週間で腎機能が低下する急性腎障害(AKI)です。


幸いにもNSAIDs によるAKIであれば早期に薬剤中止をした場合、数日から数週間で回復することが多いです。ただし、慢性腎臓病(CKD)患者さんにNSAIDsを使用する際は、腎機能を悪化させるリスクが考えられます。


さらに高度腎機能障害(透析患者さんも含む)がある場合、薬剤排泄の遅延により血中濃度が高くなり薬効の増強や副作用発現のリスクが高くなります。


そのことから腎臓病患者さんへのNSAIDsの使用は推奨されていません。以上のことから腎血流の低下している患者さんや腎臓病患者さんにはロキソニンよりもアセトアミノフェンが使用されています。


2.高齢患者さんのロキソニン使用時のリスク評価

ロキソニンを使用するときに注意が必要なのは腎臓病患者さんだけではありません。


ロキソニン使用による薬剤性腎障害を起こす危険因子には、高齢患者さんが挙げられています。関節痛などでロキソニンを希望される高齢患者さんは少なくありません。


そんなロキソニン内服の対象となりやすい高齢患者さんは、併存疾患に対して多くの薬を内服している場合があります。また、脱水を呈していることがあり特に注意が必要です。


年齢や併存疾患、併用薬の使用状況などに基づいて正確なリスク評価を行いロキソニンの使用について検討できるとよいです。


高齢患者さんのロキソニン使用時のリスク評価

3. アセトアミノフェンなら大丈夫?

腎臓病患者さんの疼痛コントロールにおいて、ロキソニンと比較される薬がアセトアミノフェンです。

国内のガイドライン上でも疼痛のある腎臓病患者さんにはアセトアミノフェンを使用することが提案されています。しかし、アセトアミノフェンについても市販薬を含む他の鎮痛薬と併用し長期服用することで腎障害を起こす危険性があるため注意が必要です。

一方でロキソニンによる腎障害の発生頻度は、腎機能が正常であれば術後疼痛緩和目的による短期間投与なら非常に低いとも言われています。いずれも腎機能のステージと容量、投与期間を考えた処方が大切です。


4.まとめ

今や成人の8人に1人が慢性腎臓病といわれる時代です。
日頃関わる患者さんの中にも腎機能が低下した患者さんが隠れているかもしれません。

市販薬にはロキソニンをはじめ、NSAIDsを含む薬が多く存在します。そうした市販薬を服用し続けることで患者さんは知らないうちに腎臓へ負担をかけてしまっていることがあります。

こうした患者さんたちの腎臓を守ってあげられるのも私たち看護師だと思います。本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。


~ライタープロフィール~

【杉本和仁】ナースLab認定ライター
透析看護認定看護師
1991年生まれ。埼玉県出身。看護師歴10年目。新たな国民病と言われる慢性腎臓病を一般の方にも広く認知していただくために奮闘中。院外での活動では2021年にマインヘルスケア株式会社より出版された電子書籍の制作に参画。
電子書籍:https://note.com/youtube_nursing/n/nc0971df13689


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