なぜ動物病院へ?
犬や小動物を飼っていた私は自然と動物好きとなり、仕事が休みの日はよく動物園に訪れ気持ちをリフレッシュさせていました。そんな私が動物と関わる仕事を始めるきっかけとなったのは数年前、看護師の仕事から離れようと思った時期でした。リクルートサイトで「動物 未経験」というワードで検索し、そこで動物病院の看護助手の仕事に出会ったのです。動物病院は獣医師・愛玩動物看護師・ドッグトレーナー・トリマーといった、動物に関わる専門的な知識を学んだ人が大半を占めていますが、一部の動物病院では未経験でも働ける看護助手を募集していることがあります。看護師の経験があるならと採用してもらい、私は動物病院で働き始めることとなりました。
1日の業務内容
動物病院の看護助手は人間の病院で働く看護助手と同様に、直接医療行為に関わりません。では実際にどのような1日を過ごしているのでしょうか。
・9:00 始業開始
病院によりますが始業開始は9時からと遅めです。早めに出勤して情報を収集することはないため、業務開始の数分前に出社します。出社すると構って欲しそうにこちらを見つめる病院猫がお出迎え。スタッフや動物たちに挨拶してから1日が始まります。動物病院ではさまざまな動物たちが来院するので毛や臭いが残りやすい環境です。そのため、診察室や動物たちのお部屋を入念に掃除して診療開始に備えます。・10:00 午前の診療開始
診療時間は受付業務が多い傾向です。動物医療は保険診療ではないため。たびたび驚くような会計額になることがあります。
診察が立て込んでいるときは簡単に問診をとってから愛玩動物看護師に引継いだり、処置の準備を手伝ったりします。また採血のお手伝いをすることも。動物医療では採血に駆血帯は使用しません。人間の手で太い血管を駆血し採血するので、大型の動物の場合はそれを補助することがあります。

・13:00 午前の診療終了
検査・手術の開始
午前の診療が終わると予定していた検査や手術の時間です。エコーやレントゲン検査では、人間のように動物は同一体位を保持できないので、愛玩動物看護師と一緒に保定することがあります。保定とは動物を不動化(動かないように)して、安全に検査や処置を実施できるようにする看護技術の一つです。保定の技術力が診療に与える影響は大きいといわれるほど欠かせない技術となっています。・14:00 休憩
休憩時間には病院猫と猫じゃらしで遊ぶことがあります。動物好きにはたまらない時間です。

・15:00 午後の診療準備
午前の診察で汚れた場所は再度入念に掃除します。針やシリンジ、アルコール綿などの物品補充や診察で使用したタオルも洗濯します。この時間に犬や猫のトリミングを終えることが多く、さっぱりした姿で登場する動物たちはとてもかわいいものです。・17:00 勤務終了
午後の診察が始まりますが、看護助手の仕事はここで終了です。愛玩動物看護師がいるのでほとんど残業はありません。朝と同様、スタッフと動物たちに挨拶して退勤します。
看護師が見た動物医療のリアル
動物医療では人用の医療機器や薬剤が多く使用されます。病院でお馴染みの医療機器があるため仕事は覚えやすいのですが、錠剤の薬を動物の体重に合う量まで小さく割って投与していることには驚きました。また動物が動いてしまい採血が失敗することやレントゲン写真が上手く撮れないこと、治療中に噛みつかれたり引っかかれたりするなど、人の医療ではあまり起こらないことがたびたび起こります。治療だけでなく、より良い治療環境を保つために汚物の処理や掃除も業務の一つです。動物好きだけでは務まらないのが正直な感想です。
まとめ

動物と関わる仕事は大変なこともありますが、動物たちに癒やされエネルギーをもらえるとてもやりがいのある仕事です。動物だけでなく一緒に働く人たちの勉強熱心な所や動物たちに思いやりを持って接する姿は、看護師として刺激を受けることがたくさんありました。私が「看護の仕事をしたい」ともう一度思えたのは、ここで出会った人たちのおかげです。
長い看護師人生を過ごしていけるように、看護師の仕事に疲弊しているなら一度離れてみるのも悪くないものです。
ライタープロフィール
【西村明香(にしむら・あすか)】ナースLab認定ライター
看護師・保健師
大学を卒業後、総合病院で勤務し、呼吸器内科・婦人科・小児科・訪問看護を経験。現在は在宅医療をメインに働いている。モットーは「私と関わるすべての人、そして私自身も笑って過ごせるような看護をすること」
看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」