NICUとは、新生児集中治療室のことです。早産児や低出生体重児、または何らかの疾患のある新生児を24時間体制で治療、ケアしています。近年では高齢出産や不妊治療の増加を背景に、NICUの需要は高まっています。今回はNICUで8年勤務した看護師がNICUの「あるある」をご紹介します。
目次
名前のトレンドに詳しくなる
NICUに入院するのは全員生まれたばかりの赤ちゃんです。入院中にご両親たちが赤ちゃんの名前を決めると、NICUのナースに伝えてくれるので、名前のトレンドに詳しくなります。例えば「この名前、最近よく見かけるな」とか「今は少し古風な名前が流行っているのかな」など、ナースの間で話題になることもしばしば。また、NICUではご家族とのコミュニケーションも多いため、名前の由来を聞いてほっこりする場面もあります。
お母さんになっても安心だねと言われる
NICUでは看護師が毎日赤ちゃんをケアするので、おむつ交換やミルク、抱っこしたりあやしたりするなど、治療以外のお世話も担っています。NICUで働いていると、友人や赤ちゃんのご家族など周りから「お母さんになったらきっと安心だね」「育児に強そう」と言われがちです。新生児期の育児は確かにプロかもしれませんが、NICUでは交代勤務で赤ちゃんたちのケアにあたっています。実際に自分の子どもを24時間世話するとなると、意外な悩みや想定外のことが起こったりするものです。
夜勤に強くなる
NICUは集中治療室であり、24時間体制で赤ちゃんをケアしなければいけません。そのため、他の病棟よりも夜勤をする看護師の人数が多く必要です。夜間も3時間おきにミルクをあげたり、緊急入院の対応があったり、急変したりするなどフル稼働なので、夜勤の方が大忙し!なんてことも……。夜勤回数が多くなったり、夜勤専従のシステムがあったりするので、夜勤に強くなることも多いでしょう。
満月や潮の満ち引き、台風を意識する
赤ちゃんがNICUに入院するタイミングの多くは出生時です。出産は満月や潮の満ち引き、台風に関係していると言われることがあります。科学的には証明されていませんが、古くからの言い伝えや迷信でそのように言われているため、NICUでは夜勤前など「今日は満月らしいですよ!」「緊急入院あるかもねー」など、話題になります。
緊急入院や急変に対するチームワークは抜群
NICUでは緊急入院や急変が多くあり、チームワークが非常に重要です。赤ちゃんの命を守りたい思いは、チームの結束力を強くします。例えば、緊急入院が決まると「私入院を受ける準備します!」「じゃあ赤ちゃんのミルクは任せて!」「私が点滴作るから〇〇さんは記録してね!」など、抜群のチームワークを発揮します。
夜勤明けの日差しがまぶしすぎる
NICUでは、早産で生まれた未熟な赤ちゃんをなるべく胎内に近い状態で育てるために、環境を調整します。胎内で赤ちゃんが感じる明るさに合わせるため、NICU内の照度も暗めです。朝になっても照度が完全に明るくなることはないので、長時間の夜勤を終えた朝、勤務が終わって外に出ると、日差しがとてもまぶしく感じます。無事に夜勤を乗り切り「やっと帰れる」と安堵感を感じる瞬間です。
モニターアラームの音が耳に残る
NICUのような集中治療室では、赤ちゃんの全身状態を把握するために24時間モニタリングしています。看護師は常にモニターの音を意識し、アラームが鳴れば素早い対応が必要です。仕事中は常にアラーム音を意識している状態なので、勤務終了後も実際には鳴っていないのに「ピピピピ」という音が耳に残ったり、夢の中でモニター音が鳴ったりすることも。少し不快に感じることもありますが、仕事への集中力や責任感の現れとも言えます。
赤ちゃんへの愛が強くなる
NICUで赤ちゃんをケアしていると、次第に赤ちゃん一人ひとりに強い愛着を持つことがあります。特に超未熟児で生まれた赤ちゃんは、入院期間が3か月前後と長くなり、その成長過程は著しいものです。1000gにも満たなかった赤ちゃんが、3000gくらいまで大きくなり、元気に退院していく姿を見ると、心から嬉しくなります。時には感動して涙を流すこともあるかもしれません。赤ちゃんだけでなくご家族との関係性も深まり、ご家族と一緒に赤ちゃんの成長を見守れることを、誇りを感じる瞬間です。
まとめ
NICUでは赤ちゃんの治療だけでなく、日常の世話もします。看護師でありながら、親の代わりでもあるため、責任とやりがいを感じるものです。緊急入院や急変なども多く緊迫した環境ではありますが、赤ちゃんたちの頑張る姿や成長する姿は私たちに癒しを与えてくれます。NICUの魅力を少しでも感じていただけたら、嬉しいです。
~ライタープロフィール~
【いもみ】ナースLab認定ライター
看護師・保健師、2児の母。4年制公立大学卒業後、総合病院にて6年間NICU勤務。その後、出産を機に中規模病院の手術室に転職。時短勤務の傍ら多様な働き方を求めて、2年前より看護師ライターとして活動する。
ブログ(https://imomimimi2525.com/)
看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」