移動時間0分の訪問看護があります

ナースライター にこみ
ナースライター にこみ
移動時間0分の訪問看護があります

訪問看護には悪天候や交通渋滞といった、移動に伴う負担は避けられません。しかし、私が働いている訪問看護ステーションでは、訪問における移動時間は0分です。その秘密は、有料老人ホーム内で訪問看護を実施しているからです。「施設の中で訪問看護ができるのかしら?」と疑問を抱くかもしれません。この記事では、施設内での訪問看護における魅力をご紹介します。



1.施設内で訪問看護を実施できる仕組みとは

施設内で訪問看護を実施できる仕組みとは

私は訪問看護師として、訪問している施設に併設した訪問看護ステーションに所属しています。施設は住宅型有料老人ホームであり、訪問看護ステーションは同じ建物内にあります。施設はすべて個室となっており、利用者様のお部屋を「居宅」として扱うため、訪問看護として介入することが可能です。訪問場所は施設でありご自宅ではありません。とはいえ、医師の訪問看護指示書に基づいて訪問看護サービスを提供しているなど一般的な訪問看護と多くの共通点があります。このような職場は正式名称ではありませんが「施設内訪問看護」と表記されることが多いようです。



2.訪問件数は1日に10件ほど

私の職場では、1件あたりの訪問時間は30~40分です。午前中に5件、午後に6件と連続して訪問する時間帯もあれば、空き時間が設けられている時間帯もあります。一般的な訪問看護よりも報酬単価は低いため、1日の訪問件数は多くなります。しかし、業務の流れが時間割のように組まれているため残業は少なく、とても働きやすい環境です。私の職場では夜間帯も看護師が訪問するため、オンコール対応はありません。夜間帯も日中と同様、訪問形式で介入しています。



3.医療依存度の高い利用者様が多い

私が訪問する施設には、30名ほどの利用者様が入居されています。神経難病を抱えている方が多く、半数以上の方はALSで重症度も高い傾向です。多数の利用者様が人工呼吸器を使用されており、医療的なケアは欠かせません。終の棲家として入居されている方ばかりで、看取りにも対応しています。自宅での療養生活は難しいけれど一般的な施設では人工呼吸器の管理など医療的なケアが難しく入居できない、といった事情にも対応可能です。また、共同生活におけるメリットを活かして、私の職場では、病状の進行に伴う不安を共有する機会やイベントの参加など利用者様同士の交流が盛んです。



4.施設看護師としての役割も担っている

提供している看護サービスは創傷処置や点滴投与など、一般的な訪問看護と同様の医療的ケアです。介護施設のため、ナースコールにも対応しています。痰の吸引やポジショニング調整など、訪問時間外で利用者様と関わることが多いのは一般的な訪問看護との違いかもしれません。また、私が訪問している施設では定期的な往診があり、その対応も業務の一環です。利用者様の状態に応じて胃瘻増設や気管切開の必要性があるといった場合は、外部の医療機関への入退院に関する調整にも対応しています。介護施設で実施されている季節ごとのイベントや外出支援なども看護師の役割です。



5.「施設内訪問看護」は見つけにくい!?

インターネットの検索窓に「施設内訪問看護」と入力すると何件か見つけられますが、一般的な介護施設や訪問看護の求人数より少ないかもしれません。神経難病や悪性腫瘍など医療依存度の高い利用者様が多く入居されている施設で訪問形式を導入している所はあります。しかし、施設によって異なるため詳細をよく確認して下さい。また、一般的な訪問看護と同様に、個人宅への訪問看護を併行して担っている訪問看護ステーションもあります。外部の介護施設に出向き特定の利用者様だけに訪問する事業所もあるなど、求人数こそ多くはありませんが幅広い働き方があるでしょう。



6.訪問看護でも常に協力し合える

訪問看護でも常に協力し合える

「訪問看護に興味はあるけれど、一人で訪問するのは不安」と躊躇している方は少なくないかもしれません。私の職場は日勤で看護師が3~4人配置されており、困ったときの協力体制も整備されているため、非常に心強いはずです。施設内訪問看護を導入している事業所の場合、職員が施設内に常駐しているケースが多い傾向です。私の職場では介護職員、リハビリ職員、ソーシャルワーカーといった看護師以外の職員も常駐しています。



まとめ

施設内訪問看護は移動に伴う負担がなく、自動車運転免許も不要です。個人宅ではありませんが、訪問先には一定の居室空間が確保されています。「人の家に上がることに抵抗がある」という意見は、訪問看護に踏み込めない理由として挙げられます。施設内訪問看護ではその心配はいりません。馴染みの少ない形態ですが、職場選びの新たな選択肢として加えてもらえると嬉しい限りです。



ライタープロフィール

【にこみ】ナースLab認定ライター
30歳で看護師免許を取得し、現在は有料老人ホームに非常勤として在籍している。週3~4日働く、自称ゆるナース。クラシック音楽鑑賞とお笑いが大好きな40代ママナース。

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