スキン-テアって何?表皮剥離と何が違うの?
その独特な名称のナゾはもちろん、なぜスキン-テアは看護ケアで日常的に出会ってしまうのか?
さらに、高齢者虐待との誤解も受けやすく、1ヶ月以上治らないスキン-テアにも出会う事があります。
この記事では、スキン-テアに関わる3つの「なぜ?」に迫りながら、看護ケアに役立つ知識とヒントを探っていきます。スキン-テアは知っているけど曖昧という方、全く初耳という方へ、スキン-テアの全体像を分かりやすく解説します。
1.なぜスキン-テアという名称なのか?
スキン-テアは、「摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる、真皮深層までの損傷(部分層損傷)をスキン-テア(皮膚裂傷)とする。」1)と定義されています。病態は、表皮剥離と同じと考えて良いでしょう。
海外では以前から“Skin-tear”という名称で研究が進められていました。そして、日本でも2014年に国内実態調査が行われ、2015年には「スキン-テア」と名称が統一されるようになりました。
ここで発音に注目です。「tear」を“ティア”と発音すると「涙」、“テア”と発音すると「裂ける」という意味になります。定義では、「皮膚が裂けて生じる~」とありますので“テア”と発音しましょう。さらに、「スキンケア」と読み間違えないように“スキン”と“テア”の間にハイフン(-)を記載するルールがあるのを知っていましたか?まさにトリビアですね。
2.なぜスキン-テアは高齢者虐待と間違われるのか?
スキン-テアの有病者は49.5%が75歳以上を占め、乾燥し紫斑のある上肢に多く発生していました。1)ショートステイや退院時、患者さんの腕に青あざができていたり、皮膚が裂けていたら、医療者からの虐待と誤解されてしまうかもしれません。スキン-テアであることを説明できるようにしておきましょう。
もちろん、その逆も考えられます。 超高齢社会において、高齢者虐待の報告数は年々増加しています。その中でも、身体的虐待が約6割(59.8%)2)を占めています。
では、どのような場面でスキン-テアが発生しているのでしょうか?
スキン-テア発生状況の第1位は、「点滴の固定テープを剥がした時に皮膚も剥がれた」、第2位「転倒した」第3位「ベッド柵に手足をぶつけた」1)です。「車椅子のトランス時に引っ掛けた」も看護師なら想像できるのではないでしょうか。
スキン-テアの発生は、看護介護する側のケア技術も少なからず影響しているのです。
3.なぜ治る速度に差があるのか?
1ヶ月以上もジクジクして治らないスキン-テアに出会ったことはありますか?感染創の場合はもちろんですが、全身状態、栄養管理などが安定していても治癒しにくい場合、スキン-テアの皮弁をチェックしてみましょう。裂けた表皮が皮弁として残っており、内側に捲れた状態になっていませんか?その場合、皮膚の再生が妨げられ、皮弁が壊死し、感染のリスクも高まります。結果的に治癒が遅れてしまいます。
スキン-テアには、皮弁が残っているものと完全に欠損した状態のものがあります。皮弁が残っており、元の位置に戻されている状態であれば、約2週間程度で皮弁が生着し、治癒へと向かいます。皮膚接合テープを使用して皮弁を固定するのも効果的です。
一方、皮弁が欠損している場合は、上皮が再生するための時間を要します。1週間ごとに観察し、サイズが縮小していれば問題ありません。 繰り返しますが、受傷時に早期に皮弁が残っているのか?内側に皮弁が捲れていないか?を観察し処置することで治癒遅延を予防できます。
スキン-テア発生時の初期対応は、“皮弁が残っていれば、丁寧に伸ばして固定”です。皮弁が暗紫色の場合は、皮弁が正着しない可能性があるため受傷後48時間以内に観察しましょう。
まとめ
今回は、スキン-テアに関連する3つの「なぜ?」について述べました。
スキン-テアは世界共通の用語であり、”Tear テア”と発音する事、有病者の特徴が75歳位以上を占め、紫斑のある乾燥した腕が好発なことから高齢者虐待と誤解されやすい事、発生時は皮弁が捲れていると治癒遅延する事などについて、ご理解いただけましたでしょうか?
これらの「なぜ?」を通じて、もっと、知りたい!と思ってくれると嬉しいです。詳しい予防ケアや処置方法については次回のテーマにさせていただきます。また、お会いしましょう。
引用参考文献
1)日本創傷・オストミー・失禁管理学会:ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理,照林社,2017
2)厚生労働省:平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等 に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果,
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196989_00001.html(外部サイト)
(アクセス日2023/6/5)
ライタープロフィール
【浦田克美】
看護師経験25年。皮膚・排泄ケア認定看護師、特定看護師(創傷管理分野)、おむつフィッターの資格を取得。現在 東葛クリニック病院勤務。
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