酸素吸入を始めるとき、酸素流量計をどのように選んでいますか? 実は、指示された酸素投与をしたつもりでも、実際の投与量とは異なることがあります。また、酸素流量計は5~7年の耐用期間がありますので、壊れたまま使用していないか点検する必要もあります。指示された酸素流量をきちんと投与するために、適切な酸素流量計の選び方や点検のポイントを紹介します。
1. 酸素流量計の種類と選択
① 大気圧式
流量計内部の圧力は大気圧に維持されています。低流量システム(鼻カニューラ、フェイスマスク、リザーバーマスク)の使用が可能です。
② 恒圧式
流量計内部の圧力に0.4MPaの配管圧力がかかっています。高流量や低流量システムの両方が使用できますので、ベンチュリーマスクの使用は恒圧式の酸素流量計を使用しましょう。ただし、恒圧式酸素流量計は、使用しないで酸素配管につけっぱなしにすると、圧力がかかったままの状態となり、破裂する可能性があります。使用していない間は酸素配管から外します。恒圧式の見分け方は、0.4MPaの表示や、酸素配管に装着した時に、フロート(コマ)が一瞬浮き上がることでわかります。
③ ダイヤル式
ダイヤルを投与量の数字に合わせて酸素投与量を調整でき簡便ですが、実際に投与される酸素流量と数値が合っていないことがあります。写真のように、2Lと3Lの間で設定された場合、酸素は流れていません。カチッと音がする位置までダイヤルを回します。また、数字がダイヤルの中でずれてしまっていることもあります。そのままにせず、修理に出してから使用してください。
④ フロー式
ゲージ管(目盛付きの管)内のフロート(コマ)の位置で酸素流量を確認します。その際は、必ず目線は目盛りと水平になるようにして酸素流量を設定します。ストレッチャーを使用する時にフロー式酸素流量計のついた酸素ボンベの使用は不向きです。なぜなら適切な目線でフロート(コマ)の位置を確認できないからです。また、ゲージ管がドアや壁などに当たって破損する可能性もあります。
2. よくある酸素流量計の質問
① 酸素流量計の加湿をした方がいい時は?
酸素吸入では、基本的には加湿は必要ありせん。加湿をした方がいい場合は、酸素投与が4L以上であること、酸素吸入で乾燥を訴える場合などがあります。加湿瓶で使用した蒸留水は、感染防止の観点から1日1回の交換が望ましいです。注ぎ足しする場合は、1日1回廃棄してから新しい蒸留水を注入しましょう。
② 保守点検はどうしたらいいですか?
酸素流量計の添付文書には、日常点検と保守点検、業者による定期点検が記載されています。
使用前に日常点検として、外観の点検、漏れの確認、フロートやダイヤルの動作確認、加湿フィルターから出る泡の異常の確認などを行います。
3か月ごとの保守点検は、日常点検に加えて、各部品に変形や劣化がないか、より詳しく酸素流量計の状態を確認します。
2年ごとの定期点検は、消耗部品や機能・性能点検を行います。加湿瓶付きの酸素流量計では、ゴムパッキンがないまま使用して、酸素漏れの状態になっていないか注意します。
③ 耐用年数は何年ですか?
酸素流量計の添付文書に耐用年数が記載されています。だいたい5~7年となっています。耐用年数よりも長く使用している場合、故障していても気づかないことがあります。特に、ダイヤル式は、設定した数字の酸素が投与されていると信じるしかありません。酸素流量を正確に測定するための専用の測定器(酸素流量チェッカー、25万円くらい)がありますので、確認してみると良いでしょう。
④ 洗浄消毒は何がいいですか?
酸素流量計の添付文書を参考に洗浄や消毒を行いましょう。酸素流量計は吸引装置の近くに設置されているため、喀痰が飛び散って不潔になっていることがあります。水で湿らせた布に中性洗剤を少量加えて汚れを落とし、乾いた布等できれいに拭き取ります。消毒液による清拭は、金属部の腐食を起こす可能性がある種類のものは避けた方がいいです。施設の洗浄や消毒に関するマニュアルを参考にして行ってください。もしマニュアルがなければ、感染管理認定看護師などの協力を得て、マニュアルの新規作成や追加修正を行いましょう。
まとめ
みなさんが患者さんに酸素投与をしても呼吸状態が改善しなかった経験はありませんか?その原因の1つには酸素流量計の不適切な選択や間違った使用方法があったかもしれません。酸素流量計の添付文書はネット検索で見ることができますので、参考にしてみてください。
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ライタープロフィール
【中澤由紀子】
子どもと福井県に移住し、呼吸器疾患看護認定看護師を取得。看護師特定行為研修修了。急性期病棟勤務や医療的ケア研修講師などを経験。
得意なことは寝ること、苦手なことは片づけと料理。