皆さんは、がんになってから患者さんが一番辛いと思っていることをご存知ですか？ 病院という組織を離れて、がん患者さんに関わる中で知った、今までで一番辛かった出来事。そこから、看護師としてぜひ身につけて欲しい、大切なスキルについてお話しします。

1.がんカフェでの出来事

看護師人生、長年の病院勤務の最後６年間を緩和ケア病棟で過ごしていました。休みの日にたまたま目にした「がんカフェ」にふらっと立ち寄ったことがありました。
「がんカフェ」とは、病院でも自宅でもない第三の場所。そこに、がん患者さんやご家族が集い、対話をする場所です。

そこで、同じテーブルに座った、がん患者さん数名に「今までで一番辛かったのは、どんな時でしたか？」と質問しました。
そうすると、全員の患者さんが、同じ答えだったのです。

それは「がんと診断された日」。

そして、その理由が「ある日突然、がんと診断されて、頭が真っ白になったまま家に帰ることになった」「精密検査の結果を聞きに行っただけだったのに、その日が、最悪の日になった」「何をどうしたらいいか分からなくて、親友にLINEしたら、既読無視された」など、大きな苦悩を抱えていました。長年看護師として、多くのがん患者さんに関わり、まして緩和ケア病棟でがん患者さんと毎日接しているのに……。ある意味、医療のすき間だと感じ、とてもショックを受けました。

2.がん告知の現場

がん告知のほとんどは、大学病院や、がん拠点病院で行われます。
だからこそ、がん告知後のフォローもされているのが当たり前だと思っていました。
しかし、外来という場所は、1人1人に時間をかけて対応することが難しい場所です。病院によっては、すべてのブースに、看護師が配置されているとは限らないのが現実です。昔と違って、現代は、殆どの方に告知を行っているため、たった一人で告知を受ける方も少なくありません。
また、院内にある「がん相談支援センター」などの利用率も低く、何年も治療を受けていらっしゃる患者さんでも、告知された日が一番辛かったと思うほど、ショックが大きいということなのです。

3.がん告知における看護で大切にして欲しい２つのスキル

① アンテナを立てておくこと

② 自分の心と身体のコンディションを整えておくこと

① 日々、体調が変化する患者さんと対応する中で、
「いつもと違う」という変化に気づけたり、予測を立てたりすること、患者さんの立場に立った配慮は、看護師として大切なスキルだと思います。
「ナースコールが良く鳴る部署は、看護の質が低い」と言われることがあります。ナースコールが鳴る前に、点滴や食事が終わる頃を見計らって訪室するのと同じように、がん告知後の患者さんを、そのまま帰らせない、患者さんに我慢をさせるような対応をしない…など、できることはたくさんあると思います。
ほんの少し意識するだけで、痒いところに手が届く、患者さんが必要だと感じている対応ができるのではないかと思います。


② がん患者さんをはじめ、看護師は、色んな人と関わることが仕事です。
だからこそ、感情が揺さぶられることも多くあると思います。
また、日々の業務に追われて睡眠不足になっていたり、夜勤など不規則な生活で体調を崩したりやすい職種でもあります。
まずは、ケアを提供する側が健康でないと、適切な判断も、配慮もできません。自分の心と身体の健康を維持することは、自分にしかできないことを忘れてはいけません。私は質の高い看護を提供する上で、一番大切なことだと感じています。

まとめ

がん患者さんが、「がん告知を受けた日」を、一番辛かったと感じていることからも、人生を左右するような告知の現場における看護師の役割は重要だと感じています。
しかし、人員配置の問題、外来フローによる問題、業務改善の必要性など、簡単には解決できないことも分かります。
だから、私はそんな医療のすき間を満たすために、病院の外でがんサポートの活動をしています。2人に1人が、がんと診断される時代でもあり、簡単にがん告知が行われるようになったからこそ、必要な方に、必要な看護やケアが提供されるような仕組みも必要ですね。
病院の中と外で、患者さんをサポートできれば、良い意味で役割分担ができ、患者さんにとっても、選択肢を増やすことに繋がるのではないかと思っています。

ライタープロフィール

【片岡 幸子】
1967年生まれ、長崎出身。看護師36年目。
一般病棟、緩和ケア病棟、看護学校、保育園、訪問看護を経験。
2019年一般社団法人がんサポートナースを設立。現在、代表として地域における、医療のすき間を満たすために活動中。
一般社団法人がんサポートナース