内視鏡室の看護ってご存じですか?胃カメラの前に咽頭麻酔をかけたりリラックスして検査を受けられるように声かけをしたり、前処置だけではなく患者さんの精神的なサポートが必須です。検査室の中では迅速かつ的確なサポートが求められるため、医師やスタッフがいつの間にか「ツーカーの仲」に。経験がなければ謎が多い内視鏡室の看護師。その知られざる実態を「あるある」でご紹介いたします。
目次
1.患者さんの体格と大腸カメラの太さは比例
患者さんの体格が大きい場合、太くてコシの強いファイバーが適しています。たとえ事前にファイバーの準備をしていても、受付に来た患者さんを見るなりファイバーの種類を変更することもしばしば…。そのため内視鏡室には、少しずつ特徴の異なるファイバーがたくさん準備されているんです。
2.業務のための勉強が気づけば資格取得に
次々と新たな処置や治療法が確立する内視鏡の現場では、自己学習は欠かせません。教科書だけでは足りない知識は内視鏡学会の講習を受講して学んでいます。すると、配属当初は全く考えていなかったスタッフが自然と資格を取得しています。資格は「消化管内視鏡検査技師」になります。将来的に専門分野で活躍したい方にはおすすめです。職場によっては別途手当てがあったり給与アップにつながったりすることも。
3.モニターに映る粘膜から消化管の場所が分かる
初めはモニターに映る粘膜が消化管のどの部位であるのか分かるまでに時間がかかります。しかし経験を積むと肛門から入っているファイバーの長さと関連づけて、どこを見ているのか理解できるようになってきます。検査の記録用紙に生検した場所を記載する必要があるので、粘膜の場所を理解することが大切になります。モニターに映る粘膜から消化管の場所を言い当てられるのは、内視鏡室の看護師ならではの特技かも。
4.鉗子で粘膜採取(生検)ができるように
内視鏡室の看護師は、検査中の医師のサポート役に欠かせない存在です。内視鏡室で経験する看護業務の1つに、鉗子による粘膜採取、いわゆる生検があります。採取する目的の場所まで鉗子を進め、医師の「開いて、閉じて」の声に合わせて鉗子を操作します。少しでもタイミングがずれるともう一回やり直すことになり、検査時間が延長して患者さんに負担をかけてしまいます。なによりも医師との呼吸を合わせることが大切なのです。
5.介助が上手な看護師ほど、検査室の汚れが少ない
ベッド上や周囲が汚染されやすいのが内視鏡検査の特徴です。汚染が広がらないようにガーゼを患者さんの口元や肛門の下に置いたり、ファイバーを持つ手が滑らないように医師が使っているガーゼを取り換えたりと、内視鏡室の看護師は患者さんの介助をしつつ検査室の汚染を最小限におさえるように努めています。時には汚れたガーゼがベッド上や床に散乱していたり、患者さんの検査着が汚染されていたり、看護師自身が汚染を広げていたりすることも。介助がスムーズな看護師は、ベッド周りに汚れはほぼなく、きれいなガーゼが置かれているだけ。目指すべき内視鏡室の看護師像ですね。
6.ファイバーのシャッター音は検査終了の合図
内視鏡検査は胃カメラであっても大腸カメラであっても、まず一番奥(十二指腸あるいは盲腸)までファイバーを進めます。このとき粘膜の観察はしません。奥まで進めたファイバーを引き抜いてくるときに念入りに粘膜の隅々まで観察します。そして写真の撮り始めは一番奥に入ってから。ファイバーのシャッター音が聞こえると看護師は次の作業に入ります。観察室に患者さんの荷物を運んだり、次の予約の患者さんの前処置を始めたり、終業時間が近づいていたら検査室の片付けを始めることも。ファイバーのシャッター音は検査終了の合図なので、シャッター音を聞くために常に耳を傾けています。
7.検体を失うと全員で大捜索
検体は小さくて軽いため、専用の紙に貼り付けた検体が検査終了後になくなってしまうことも…。もちろん探し出すまで終わりません。考えられる場所は、検体の貼り付けを行っていた処置台付近か、排液の溜まった吸引ビンの中などある程度予測しながら捜査開始。見つからなければ吸引ビンの中身をザルでこします。こしてもザルになければピンセットで排液の中を捜索。臭いとの戦いが繰り広げられるのです。
8.靴下は2枚履き
医師のサポートに集中するあまり、体液が靴下に付着することも。自分の靴下が犠牲になるのを防ぐため、医局で準備してくれた作業用の靴下を自分の靴下に重ねてはきます。万が一体液がついても、自分の靴下まで被害は及びません。作業用の靴下は、病院で洗濯・消毒をしてくれるので持ち帰る必要はありません。最近ではシューズキャップに変更されたので使い捨てにが主流に。
まとめ
なかなか足を踏み入れる機会が少ない内視鏡室の魅力についてご紹介しました。短時間で患者さんの心身ともに関わることが重要な部署です。安心・安全に治療が受けられるように、看護師自身のスキルアップも求められます。この記事を読んで、やりがいの多い内視鏡室の看護に興味をもっていただけると嬉しいです。
~ライタープロフィール~
【谷口由紀子】ナースLab認定ライター
看護師歴18年目。2児の母。都内大学病院で救命救急センター、循環器科、小児科、透析室、内視鏡室などを経験。子育てを中心とした働き方を模索した結果、2020年6月フリーランスへ転向。Webライターとディレクターを主軸としながら、派遣・単発で看護師としても働いている。6歳の息子が歩ける医療的ケア児。同じ境遇のご家族に対し、ブログを通して自身の子育て方法や医療的ケア児を取り巻く情報を発信している。
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