近年話題となっている「HSP」をご存じでしょうか?HSPとは、さまざまな刺激に対し、敏感で繊細な気質を持っている人のことをさします。じつは5人に1人がHSPの気質があるといわれています。細やかな事に気がつき、共感力のあるHSPさんは、一見看護師という職業に向いているように感じます。しかし、不規則な業務体型やつねに緊張感を強いられる現場では、たとえ非HSPさんでも、疲弊しやすい環境であるといえます。今回は、HSP気質を持つ看護師さんが働き続けられる方法を、筆者の経験を交えながらご紹介します。
目次
1.バタバタ目まぐるしいのは苦手
個人差がありますがHSPさんは感受性が高く、無意識に周囲からの刺激を受けやすいため、仕事になかなか集中することができません。また、細かい事が気になってしまったり、深く物事を考えてしまうため、マルチタスクが苦手な傾向にあります。一つの仕事を終わらせることにも時間がかかります。とくに忙しい病棟になると、次から次と素早く優先順位を決めて対処しなければならず、HSPさんにとって非常に疲弊しやすい環境だと言えます。
私は新人時代「まずは急性期から学ぶもの」という思い込みがあり、数ヶ月だけ急性期を経験しました。しかし、一つのことを深く考えてしまい仕事が進まず、その後、回復期病棟へ異動。患者さんと時間をかけて向き合える場が、自分には合っていることに気が付きました。HSPさんには、自分のペースで仕事に向き合える場所を選ぶことをお勧めします。
2.オープニングが苦手かも
新規開院、新規立ち上げは、人間関係が0からのスタートです。人間関係に悩みやすいHSPさんにとって魅力的に映るかもしれません。しかし、新しい場所は自由度が高い反面、ルールが定まっていないことで苦しむことも。また、臨機応変に対応しなければならない事が多いのも、悩みの種に。オープニングスタッフともなると、最低限の人数での稼働であることも少なくありません。人数が少ないということは、人間関係が限定的になりやすくなります。体調を崩しやすいHSPさんには、休めないことが大きなストレスになりやすいかもしれません。
3.一人でゆっくり
知らず知らずのうちに気を遣い過ぎてしまうHSPさんは、気の合う友達といても疲れてしまうことがあります。そういった意味でも、訪問看護での働き方は、通常に比べると単独での行動や業務が多くなるので、じっくり看護と向き合うことができます。転職の際は、業務内容と自分の条件やペースに合わせることができるか相談してみるといいでしょう。
4.勤務形態を変えてみる
正社員という働き方にこだわっていませんか?もちろん、様々な保障や福利厚生を考えると正社員は外せません。しかし、現在の職場が厳しい環境下もしくは、心身ともに疲弊しているのであれば一度、勤務形態を変えてみるのも一つの案です。HSPさんにとって長時間の勤務は厳しいことがある場合も。一時的でもパートや派遣は正社員と比べるとプライベートが確保しやすいので、自分のペースに合わせて勤務形態を変えてみるのもいいかもしれません。
5.看護師ならではの選択肢を活用
病棟内の機械音や緊迫感が苦手な方が多いと思います。看護師の職場は選択肢がとても多く、訪問看護、デイサービス・施設・クリニック・保育園・養護学校・専門学校・大学などがあります。働きやすい職場は一人ひとり違います。まずは一つのことにこだわらずに、いろんな方面でチャレンジしてみながら自分に合う職場を見つけるのもおすすめです。
6.自分の心のままに
様々な職場や働き方がありますが、やはり重視したいのは職場の雰囲気や働くスタッフの人柄。しかし残念なことに実際に働いてみなければわかりません。短時間の会話でも、細かなことに気が付けるHSPさんは、自分とのちょっとした違いに違和感を持ちやすいといわれています。ですので、仕事を辞めるとは「自分の頑張りが足りなかったから」と自分を責めてしまいがち。じつは筆者も自責の念や転職への焦りから、自分が抱いた違和感に目を背け、転職後に失敗する事が多くありました。このような経験から、焦らずに自分のペースを守りながら検討したり、職場の雰囲気を事前に見学したりするなど、自分自身が納得しながら行動するようになりました。
7.自分のタイプを知る
HSPさんには、完全な内向型や、疲弊しやすいのに刺激を求めるタイプなど、様々な種類があるといわれています。また、HSPだと思っていたら、違う病気が隠れていたというケースもあるそうです。それによって生きづらさへの対処法が変わってくるので、HSPに詳しいクリニックを一度受診することで、自分を知るきっかけになると思います。自分を知ることができると、その後の仕事や人生にまで良い影響を与えるかもしれません。
まとめ
筆者は「看護は好きだけどどうしても看護師が向いてない」と感じる事が多く、現在も悩みながら働いております。しかし、今は訪問看護で1人の時間も確保でき、自宅でゆっくり過ごす時間も以前より確保でき働きやすくなりました。
責任感の強いHSPさんの中には、このような働き方に対し罪悪感を抱くかもしれません。しかし、人には得手不得手があります。緊迫感や疾走感のある働き方が得意な方からすれば、HSPさんが得意とするじっくり時間をかけて関わることが苦手なこともありえるのです。お互いの得意な働き方で医療を支えられる、そんな社会になっていけばと思い今回執筆させていただきました。HSPナースさんが、感受性の強さをメリットに、自分らしく働けることを応援しています。
~ライタープロフィール~
【ゆきんこ】ナースLab認定ライター
看護師/イラストレーター/ライター
1986年1月生まれ、都内在住。20代で祖母を在宅介護しながら看護師を目指す。
回復期リハビリ病棟を経験後、生きづらさを抱えながら転職を繰り返す。他人との境界線が薄く、刺激や情報を選択できず疲弊しやすい。現在訪問看護師として「自分が安心できる生き方」を模索中。生きづらさを抱える人でも看護師ができることを証明したい。
実績:NHK Eテレ「ハートネットTV 隣のアライさん」でイラスト提供&ナレーション
YouTube「ゆきんこのきもち」:
https://youtube.com/channel/UCNL-tB1hG8ypXN9QL4x91eg