他の病棟と違って特殊なイメージ
タイトル通り、一般病棟とは雰囲気が異なります。何が違うのかというと、患者さんとゆっくり関わる時間が他の病棟と比べてかなり短いことです。病棟から手術室へ来られた患者さんを手術室前のホールで出迎え、名前や最終飲食の時間、アレルギーの有無などを確認したらすぐに手術室へ向かいます。その間、不安を軽減できるような言葉をかけますが、ゆっくりと話す時間はありません。手術室へ入るとまもなく麻酔がかけられ患者さんは眠ってしまいます。手術が終わり覚醒するまでは患者さんと直接言葉を交わすことができません。では手術室看護師は一体どのようにケアするのでしょうか。
- 手術室看護師の役割
手術室看護師の役割は大きく2つに分けられます。1つは、手術中に医師へメスなどの手術器具を渡す器械出し看護師。直接介助のことです。もう1つが、間接介助をする外回り看護師です。医師から指示があれば必要な手術器具を清潔操作で取り出したり、術野を見ながら手術に必要な針や糸などの材料を出したりするのが主な役割です。他にも、使用したガーゼを体内に残さないようガーゼをカウントしたり、ガーゼに付着した血液から出血量を測定し医師へ伝えたり、患者の状態を観察したりします。
基本的に一般的な手術では器械出し看護師1名、外回り看護師1名の2名体制です。人工心肺を利用する大掛かりな心臓外科手術や命の危険が大きい重度熱傷の事例で大幅な植皮術が必要な大手術では、外回り看護師が2名体制で入ることもありました。
また、日ごとにリーダーが決められており、リーダーは1日の手術件数や内容を把握したうえで緊急手術の場合にどの手術室を使うか決めたり、どのスタッフをどの手術に配置したりするかを決めていました。その他、私が勤務していた手術室には器材係という役割があり、手術に使用な器械を管理するスタッフがいました。外部の業者との連絡や中材との連携が主な役割です。器材係は当番制であり、1週間ごとに1名のスタッフが担当することに。なお、器材係を担当している週は手術には入らず、器材の管理に専念していました。 - どのような勤務体制か
病院によって勤務体制は異なると思いますが、私が勤務していた病院の手術室は日勤と待機という勤務体制でした。待機というのは、いわゆる夜勤です。待機のスタッフは3名体制でした。12時から翌日の8:30までが勤務時間です。12時から出勤した時は日勤のスタッフがそれぞれ手術に入っているため、待機のスタッフが手術に入ることはあまりありません。ただ日中に緊急手術が入りスタッフが足りない時、待機スタッフが手術に入ることはありました。
他には午前中に使用された器械の洗浄や滅菌、保管されている器械や器材の期限や物品数の確認、薬品管理が主な業務でした。16時頃になると非常勤のスタッフと交代して手術に入ります。夜間は日中の手術の後片付けをしますが、緊急手術が入らなければ仮眠できます。しかし、ひっきりなしに緊急手術が入ることがあるため、私は出勤してから翌朝8:30までずっと手術に入っていたこともあったのです。
平日と同じく土日も3名体制ですが、8:30から翌朝の8:30までの勤務時間です。とくに土日は手術の準備や片付けはないため、緊急手術が入らない限り、院内で待機となります。仮眠室で休んだり本を読んだりして自由に過ごすことができました。24時間勤務となるため、人によっては拘束時間が長く感じられるかもしれませんね。

看護のやりがいについて
手術室での看護師の役割は「患者さんが安心、安全に手術を受けられるように看護する」ことです。出迎えてから手術が始まるまでの時間は数十分とかなり短く、患者さんとゆっくり会話して関わる時間はあまりありません。とはいえ、たとえ関わる時間が少なくても、不安を軽減できるような言葉がけや雰囲気作りは重要です。手術当日だけではなく、手術を担当する看護師が術前ケアとして事前に患者さんの病室に出向き、顔を合わせたり手術室ではどのようなことをするのか説明したりする機会があります。できる限り時間を作って患者さんの元を訪れ、不安の軽減に努めることも重要な役割です。
手術室は非常勤でも働ける?
一度手術に入ったらなかなか抜け出せず、定時で帰るのは難しいのではないかと心配する人もいるでしょう。私が勤務していた手術室は総合病院でしたので、全科の手術に対応していました。脳神経外科や心臓血管外科、消化器外科などの手術は長時間に及ぶケースが多いのですが、形成外科や眼科などは短時間で終了するものも。
手術時間が短時間でなおかつ終了時間が把握しやすい手術に非常勤スタッフを配置していました。もし手術が延長して退勤時間が迫っても待機スタッフが交代するため、非常勤スタッフが残業することはなかったように思います。
病棟と異なり看護記録も多くないため、手術後の記録に時間を要して帰れないこともありません。
こんな方にオススメ
- 手術に興味のある方
手術室看護師は、特殊な器械の取り扱いや無菌操作など専門性の高いスキルを磨けます。一般病棟とは異なる専門的な技術や知識を深められることが、やりがいのひとつにつながるでしょう。 - 明確な成果
関わるスタッフすべての目標は「手術の成功」です。手術が無事に成功し、患者さんが大きな治療を終えたことで達成感を感じられるでしょう。手術後の訪問で患者さんが回復している姿を見れば、より一層明確な成果に対して実感が湧くのではないでしょうか。 - チームワークを大切にしたい方
手術室では、執刀医や麻酔科医をはじめ、臨床工学技士などさまざまな多職種との連携が必要です。チーム医療の一員として重要な役割を担い、活躍できることは大きな魅力でしょう。 - 専門性の高いケアに興味がある方
手術室看護は、麻酔下で意識のない患者さんの代弁者として役割が大きいものです。自分の意思を伝えられない患者さんに代わり、客観的データから患者さんの状態を的確に把握します。また手術の侵襲から患者さんの身体を守らなければなりません。手術中の不適切な体位は神経損傷や皮膚損傷の原因にもなりえます。手術は常に順調に進行するわけではありません。予期せぬ事態が起こったときの迅速な対応や先を読んだ対応が備えとして必要です。このような専門性の高いケアを必要とする現場に興味がある人にはぴったりな職場といえるでしょう。
まとめ
私は新卒で手術室に配属となりました。手術室では患者さんと直接コミュニケーションをとる時間が少なく、配属当初は、学生の頃学んできた「看護」をどう生かせば良いのかとても悩みました。働く中で、言葉を介した関わりだけが看護ではなく、麻酔下で眠っている患者さんに対し看護師としてやるべきケアがたくさんあることを学びました。一般病棟とは少し異なる特殊な環境ですが、専門的な知識とスキルを活かせる魅力ある現場だと思います。
ライタープロフィール
【東 恵理】ナースLab認定ライター
看護師、保健師、介護支援専門員。 国公立大学看護学科卒業後、総合病院にて手術室、外科病棟を経験。その後、小規模多機能型居宅介護施設へ。在職中に介護支援専門員資格取得したことをきっかけに、在宅分野に興味を持ち訪問看護へ転職。一つの働き方に縛られず、フレキシブルな働き方を目指し、ライター業に挑戦。 現在、訪問看護で非常勤として働きながら看護学校非常勤講師や介護士向け研修の講師も務めている。一児の母。
看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」