透析室は、血液浄化療法という特殊な治療法が行われる部署です。専属のスタッフが配置されているため、透析室に足を踏み入れたことのないナースも多いのではないでしょうか?
人工透析は、腎臓の病気のため腎機能が落ちて、体の中の水分や老廃物を尿として排出できなくなった患者さんに対して行われます。透析機械を使って人工的に老廃物を取り除き、血液をきれいにする治療法です。他部署とは一味も二味も違う透析室についてご紹介します。
目次
1.透析室ならではの朝の光景!入り口はいつも大行列
透析前には体重測定が必要です。毎朝、透析室の入り口には、体重測定を待つ患者さんで大行列。体重測定を終えた患者さんは、体重が書かれたメモ用紙を持って自分のベッドへ向かいます。準備が整った人から穿刺するため、早く帰宅したい患者さんは、最前列に並び体重測定を終えると、我先にとベッドへ走ります。
2.体重測定は真剣勝負
体重が増えすぎると透析量が多くなり、身体に負担がかかります。引き残してしまう可能性もあり、ドクターからお叱りを受けることも。
そのため体重測定時、患者さんはいつも真剣勝負。体重計の乗り方で何グラムか変わることがあるため、2~3回測り直しを求める患者さんもいます。
洋服の重さは施設により何グラムと決まっていて、測定値から一律で洋服の分を引きますが、少しでも体重を軽くするためにシャツを脱いだり靴下を脱いだりする患者さんも。透析患者さんにとって、体重を1グラムでも少なくするのは大切なことなのです。
3.透析室は緩急が激しい
朝の穿刺時間は非常に慌ただしいです。無事に全員透析を開始すると、嵐が過ぎ去ったかのような静けさに変わります。アラームが鳴らない限りは4~5時間そのまま経過。患者さんもウトウトと眠り込みます。
透析が終了すると一斉にアラームが鳴り響き、騒がしくなります。順番に回収作業を行って針を抜去。忙しい時間とゆっくりした時間の差が激しいのが透析室の特徴です。
4.テレビを一緒に見るのもコミュニケーション
透析の時間は4~5時間と長いため、多くの患者さんは休むかテレビを見て過ごします。スタッフが思わず患者さんのテレビに見入ってしまうことも。患者さんとテレビの話題でワイワイ盛り上がることも少なくありません。
長い透析時間を退屈しないように過ごして頂くことも大切です。テレビ番組の話題でコミュニケーションを取るのは透析室ならではかもしれません。
5.週3回、長期にわたる患者さんとの濃いおつき合い
血液浄化療法は一般的に週3回行われるので、毎日会っているような感覚になります。
夜間透析では、仕事の疲れで透析中に眠る患者さんも少なくありません。患者さんの布団を掛けなおしたり、ゆっくり休めるように環境を整えたりしているうちに、家族のような気持ちになってしまうことも。
6.病棟では見たことないほど太い注射針
透析では、血液を体の外に出すためにシャントという血管に針を刺します。この時に使う針は、何と15~18G。針の穴がはっきり肉眼で見える太さです。
透析は体外循環の1つです。点滴のように薬液を注入するのではなく、血液を取り出すため、太い針を使わなくてはなりません。針が太いため、刺される時の痛みは相当なもの。少しでも痛みを感じさせないよう努力するナースは、透析患者さんから指名され、引っ張りだこです。
7.すぐにドクター報告!?透析患者さんの検査データに驚かないで!
老廃物を除去する血液浄化療法ですが、透析は週3回のため、どうしても健康な人と同じレベルまで老廃物を取り除くことができません。そのため透析患者さんの血液検査データでは、特にカリウム(K)やリン(P)の値が高いことが珍しくありません。
透析室に配属になったばかりのスタッフは、検査室から上がってきた血液報告書を見て、ビックリして医師に報告しようとすることも。Kが高値だと心停止を起こす可能性があるので驚くのも仕方のないことです。
Kは果物に多く含まれるため、スイカが好きな患者さんは夏に、みかんが好きな患者さんは冬にKの値が高くなる傾向があります。季節や患者さんの好みを把握してデータを読む力が鍛えられます。
8.器材の洗浄、医療廃棄物が大量!スタッフ総出で手際よく
透析室では、透析回路を留めるためにコッヘルやペアンを大量に使います。使用した器具はすべて透析室で一次洗浄します。
透析ベッド数が多いほど、コッヘルの数もたくさん。洗浄作業は患者さんが帰宅されてから一斉に行います。大量の洗浄作業も手慣れたもの。みんなで手際よく洗っていきます。
透析終了後には、医療廃棄の容器や段ボールが山積み。この容器には透析で使った資材が入っています。
透析ではダイアライザーや透析回路という器材を使いますが、もちろん一度使用したものはすべて廃棄。血液を扱う透析室では、感染対策は最重要課題。器機の洗浄や廃棄物の管理は安全のために大切な作業です。
9.勤務時間ピッタリに業務終了
血液浄化療法は、施設によって違いますが4~5時間行います。医師の指示がある場合を除き、ほとんど時間通りに終わります。患者さんが帰宅したら片づけを済ませ、次の透析の準備をします。勤務終了時間きっちりと業務が終わり、ほぼ残業がない部署と言えます。
まとめ
筆者は透析室で、患者さんとナースの信頼関係の築き方を学びました。透析室は専門性が高く、勉強に打ち込んでスキルを高められる部署です。興味を持たれた方はぜひ透析看護に挑戦してくださいね。
~ライタープロフィール~
【秦さきよ】ナースLab認定ライター
1980年生まれ。看護師・保健師。糖尿病内科、血液透析室、特定保健指導を経験。現在は看護非常勤講師を務めるかたわら、ライターとして活動中。日々の生活に欠かせないものはヨガ。
ブログ:https://ameblo.jp/hatahata-books/