春の訪れとともに、出会いと別れがやってきます。
4月という時期は、職場環境が大きく変わってくる季節です。そんな中、「リーダーを任されるようになった」「管理職としてやっていかなければならない」そんな環境にいる人も多いと思います。今日は、そんな方々に向けて、後輩に本当に役立つ「フィードバックのポイント」をお伝えしたいと思います。これをマスターすれば、嫌々ながら「怒ること」も、思ってもないのに「褒めること」もやらなくて良くなります!
ぜひマスターして、あなたらしく後輩と関わっていってほしいと思います。
目次
1.どうしてフィードバックをするのかを考えよう
日々の業務の中で、たくさんの報告を受けると思います。その中で、いいこともあれば悪いこともあり、つい叱ってしまいそうになることも多々あると思います。ですが、ちょっと待ってください!そこで怒ったところで目の前の後輩にいいことはありますか?
まずは、私達がなんのためにフィードバックするか、というところを考えていきましょう。
私たちは、安全で安楽な看護を提供できる看護師に育ってほしいからフィードバックをするはずです。でも、怒ったところで、後輩は「自分のことをダメだと思って」「モチベーションが下がる」という結果しか生み出しません。これでは、私達の目的は果たせません。
2.まずは感謝を伝える
後輩が何かを報告してくれた時、最初に必要なのは感謝です。これは、インシデントを起こしたときでも、全く理解できない対応をしてきたときでも必ずです。
もし何か伝えてきてくれた時に、あなたの第一声が
「何やってるの!馬鹿なんじゃないの?」
だとしたらどうなりますか?きっと、もう二度と報告したくないと思われてしまいます。
ですから、内容はどうあれ、まずは「伝えてくれたこと」「伝える重要性に気づけたこと」「失敗の奥に隠れている後輩の貢献したい気持ち」に感謝を伝えましょう。
「言いづらいのに、ちゃんと言ってくれてありがとう!」
「〇〇をしたのは、患者さんに喜んでほしかったからなのかな。本当にありがとね」
などといった具合に、感謝を伝えようと思えばかならず伝えられます。
まずあなたの第一声は「感謝」で始めましょう!
3.次に共感をする
感謝を伝えたら次は共感です。ですが、ここでいう共感はきっと皆さんが思っている共感とは違うので注意が必要です。例えば、後輩がインシデントを報告してくれたとします。その時に
「わかる、わかる!私も〇〇ってインシデントを起こしてさ。それはね~」と返すのは共感ではありません。あくまで、あなたの体験を話しているだけです。
ここで必要なのは正確な共感です。
「インシデントを起こしたとき、どんな状況だったの?」
「その時、何を考えていたんだろう?」
「今はどう思ってる?どんな気持ち?」
「何が大事だと思ってる?」
など、今目の前にいる後輩に何が起こっているか、何を思っているのかを、できるだけ知ろうとしてください。
そうすることで後輩は、「自分のことをちゃんと知ろうとしてくれる」と思ってくれるはず。これが後々、効果を発揮することになります。
4.結果ではなくプロセスをフィードバックする
ここまできて、ようやくフィードバックに入ります。最初は、結果ではなくプロセスをフィードバックすることが非常に重要になります。これは、良い報告に対して、悪い報告に対しても同様です。
インシデントの例で考えてみます。結果をフィードバックする場合は、「こんなミスを起こしたね」「患者さんに不利益が生じたね」などといったネガティブフィードバックになりがちです。
ですが、プロセスに焦点を当てると、
「この確認行動はできていたね」
「忙しくてここをスキップしてしまったんだね」
と、出来ているところも出来てないところもしっかり伝えていくことができます。
プロセスをひも解いてフィードバックをすることで、後輩は次になにをすべきか、自分の中で考えて行動に移してくれるようになります。
5.他人と比較しない。個人の中での成長と比較する。
フィードバックの中でついやりがちなのは、「同期の中でも一番できていない。だからもっと頑張らなきゃ」といった伝え方です。
これをやってしまうと、同期の中でできているうちはいいです。けれど、同期だって成長します。その際に後輩は同期と自分とを比べて「自分はダメだ」と思ってしまいます。また、絶対に乗り越えられない人と比較され続けたら、どんどん自己肯定感は下がっていきますし、そんな状態ではモチベーションも上がらなければパフォーマンスも低下します。
ですので、やってほしいのはその人の中での比較をすることです。
「昨日と比べてここができるようになってるね!」
「4月の自分を思い出して?どんな違いがある?」
といったフィードバックをすることが重要になります。
そうすることで、後輩は「自分は成長してるんだ!」と感じ、もっとモチベーションを上げることができます。
6.出来ていることを伝える
よくやりがちなのは、ネガティブフィードバックを伝えること。「これくらい出来ないと、看護師やっていけないよ」といった類のことです。何度も繰り返していますが、これでは後輩は私たちの望む先に向かっていきません。
プロセスのところでは、出来ていないところもしっかり伝えると書きましたが、最終的には「出来ていること」これを存分に伝えてあげてください。
人は、「自分はできる!」「貢献出来ている!」と思える時にもっとやろう!とモチベーションが湧いてきますし、人からこのようなフィードバックを受けると「信頼できる仲間」だと思ってくれます。
共感の場面でも触れましたが、「自分のことを知ろうとしてくれている」「ちゃんと自分の出来ているところを認めてくれる」そんな人がいたら、信頼してくれると思います。いつか、厳しいことを言わなければならないときも、信頼している人からの言葉なら、受け取ってもらえることも多いです。
まとめ
リーダーや管理職の大きな仕事の一つは「人を活かすこと」です。これらのフィードバックのポイントをいつでも全てやらなければならないわけではなく、少しでも実践してもらうだけで、きっと後輩たちは変わっていきます。
ぜひ、その変化をあなたも感じていただき「自分はリーダーとしてやれている!」「管理者としてちゃんと関われている!」と思ってもらえたらうれしいです。
ライタープロフィール
【秋元 伸平】看護師 コーチ セミナー講師
1985年生まれ。神奈川県出身。東大病院で管理職をする傍らコーチングに目覚め、今はコーチ、セミナー講師として独立。2022年4月には日本メディカルコーチコミュニケーター協会の代表理事に就任。「医療者全てが自己実現できる社会」を作るべく邁進中。プロの小説家、フォトグラファーとしても活動中。