「救急看護に憧れて配属希望しました!ドクターヘリに乗りたいです!」
私は都内の大学病院の救急外来で働いていますが、時々こんな新人看護師の声を耳にします。実はドクターヘリを運用している病院は全国でも限られているので、残念ながらドクターヘリを運用していない病院でどんなに経験を積んでもフライトナースにはなれません。
しかし、私の働く施設ではドクターカーを運用しており、司令センターからの要請でほぼ毎日、医師や救急救命士らとともに患者さんの元へ駆けつけています。
今回は私も実際に乗っている「ドクターカーの看護」についてご紹介します。
ドクターカーとは?
ドクターカーは医師や看護師らが乗り、病院から直接、救急要請した患者さんの元へ駆けつけ、医療処置を行う車です。ドクターヘリはドラマなどでもよく紹介されていますが、それの車版と考えていただければわかりやすいと思います。全国複数の病院で運用されています。
ドクターカーのメリット
ドクターカーやドクターヘリなどプレホスピタル(病院前)で診療を行うメリットは3つです。
① 早期の介入
② 根本治療までの時間短縮
③ 適切な医療機関への搬送
救急隊は医師の指示があっても出来る医療処置は限られています。例えば緊張性気胸での緊急脱気など1分1秒でも早く医療者が現場で処置をすることで救命できる場合もあります。他にも痙攣で要請され低血糖があったため補正し、全身状態の安定後に2次救急のかかりつけ病院に搬送というケースもあります。現場で医療処置し適切な医療機関に搬送することは患者と医療機関の両者にメリットになります。
ドクターカー看護の基本
病院と異なるポイントは
① 特殊な空間
② 限られた人員と医療資源
③ 限られた時間と情報
大きく分けてこの3つになります。
① 特殊な空間
ドクターカーでは自宅や駅、職場など特殊な現場と限られたスペースで活動することになります。現場での活動は危険が伴う場合もあるので、救急隊や警察と連携しながら実施します。
自宅やオフィス、駅や崩落事故の工事現場で気管挿管や心肺蘇生というケースもあります。また搬送する狭い救急車内に同乗して医療処置を行う場合もあるので、さまざまな状況を想定して対応にあたります。
② 限られた人員と医療資源
ドクターカーでは医師、看護師、救命士がそれぞれ1名程度で活動します。看護師は自分一人だけという状況なので、豊富な知識と経験、的確な技術が必要となります。基準は施設により異なりますが、私の所属施設では経験年数が5年程度あり、救命病棟や救急外来でリーダー業務が問題なく実施できる看護師が乗車します。JNTEC(外傷初期看護セミナー)などの受講も必須となります。
医師らは患者への対応に集中しているので、現場での家族や関係者への声掛けや支援なども、ドクターカーに乗る看護師の役割の一つです。
また持参できる医療資材や薬品も必要最低限です。病院から持っていくものとして、気道確保・胸腔ドレナージ・開胸・止血・ルート確保等の資機材や輸液と蘇生・鎮痛・鎮静の薬剤などがあります。
状況から処置を予測し必要な物品をすぐに出せるよう日頃から確認しておくことも必要です。
③ 限られた時間と情報
ドクターカーでは「駅で意識消失」「交通事故」など少ない情報で現場を想定し出動します。事前の役割分担も重要です。現場までの間に、何を想定してそれぞれが何をするのかブリーフィングを行います。また現場で医療行為に使える時間は長くて10分から20分程度。この間に気道確保などABCの安定化、情報収集、家族対応、医療機関選定の助言などを行います。できる限り早く病院に搬送できることを目標に、現場での医療処置は緊急性を考えて必要最低限にするよう心がけています。
まとめ
ドクターカーでの活動は緊張もしますが、やりがいも大きいです!日本救急看護学会では乗車の経験を問わず参加できるドクターカーのオンラインセミナーも開催しているので、興味ある方はぜひ受講を検討してみてください。
ドクターカーやドクターヘリに少しでも興味ある方は救急看護を志してみませんか?
ライタープロフィール
【SmartNurse】救急看護認定看護師。
現在は専門看護師目指して大学院進学中。3人の子どもを育てるパパナース。Instagramではクリティカルケア看護に役立つ知識や、看護師キャリアについて発信中。フォロワー3.3万人以上。認定看護師を目指す方や働く看護師に役立つセミナーも毎月開催。
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