1.看護観が大きく変化する
ここでは、一般病棟の“あたりまえ”を行いません。ご飯が食べられなくなっても、大量の点滴や経管栄養をする患者さんは、ほとんどいません。例えば誤嚥のリスクがあっても、本人が望めば食事を食べることができます。ベッド上安静を強いられる時期でも、「トイレに行きたい」と希望があれば、トイレに行くことも可能。治療やリスクを優先しないので、今までの常識が大きく変わるかもしれません。
また、患者さんも希望通りの生活を送ることができると、大きな変化が見られます。治療を中止し、症状緩和がうまくいくと、歩けなかった人が散歩をするようになったり、食事を取れなかった人が食事をするようになったり、驚くようなことが起こります。
2.患者さんへの情熱がすごい!
とにかく患者さんへの愛が溢れています。「自分の時間を削ってでも、患者さんの残された時間を優先したい」と思うナースたちが多く、患者さんの意向に添えるようなケアを提供していきます。そのため、担当看護師は患者さんのことなら何でも知っています。患者さん想いのナースが多いため、後輩指導にも熱が入ります。ここでへこたれないメンタルが鍛えられることも...。
3.傾聴のプロになれる
ホスピスで大切なことは、患者さんを理解すること。「残された時間をどう過ごしたいか?」「どういう最期をむかえたいか?」など、話を聴きながら気持ちや想いをくみ取っていくことが必要となります。
患者さんの真意をくみ取るには、家族にもたくさん話を聞く必要があります。1に傾聴2に傾聴3・4がなくて5に傾聴が必須。いつの間にか傾聴のプロに!
4.家族との一体感がうまれる
患者さんだけではなく、家族の話もしっかり傾聴します。家族との歴史や想いなどを聴いていくうちに関わりはより深いものに。患者さんと家族の架け橋の役割を担うこともあるため、すっかり家族の一員に。
5.イベントの準備は本気
スタッフ皆で季節に応じたイベントを開催。夏祭りは浴衣、クリスマスはサンタクロースやトナカイの衣装で盛り上げます。疑似的な出店を催し、動けない患者さんには部屋を訪問します。桜の時期は花見を企画し、家族も一緒にお弁当をもって出かけることも。
誕生日は色紙をつくったり、家族の依頼があればパーティーを開催したり、楽しい企画が盛りだくさん。
6.麻薬金庫がけたはずれに大きい
ホスピスでは症状緩和が目的となるので、麻薬製剤の使用量は一般病棟と比較にならないほど多いです。そのため、麻薬を保管する金庫も必然的にかなりの大容量。想像できないと思いますが、見上げるほどの大きさです。
7.「看る力」が身につく
一般病棟で行われるようなモニター装着や頻回なバイタル測定など行いません。そのため、“看る“ことに集中します。チアノーゼの部位や範囲、呼吸状態、脈の触れ方などの情報をアセスメントするため「看る力」が向上します。
8.人生の学びを得られる
一人ひとりの患者さんと関わり、驚いたことは、ドラマや映画よりもドラマティックな人生を送られてきたということ。しっかり寄り添う時間がとれるため、患者さん一人ひとりの生きてきたストーリーを知ることになります。その内容は想像をはるかに超えた出来事ばかりです。
8.まとめ
今回は、ホスピスについてご紹介しました。ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、働いているナースたちは情熱的な人ばかり。ホスピスでは最期の瞬間まで寄り添うため、プレッシャーや悩みがないわけではありません。しかし、今まで出会えなかったようなたくさんの奇跡を垣間見たり、看護の充実感を感じたりすることができると思います。なによりも看護の基本ともいう「看る」ということを多く学べる現場ではないでしょうか。
~ライタープロフィール~
【mie】看護師歴24年。福岡県出身。
2次救急病院で18年勤務する。離島医療やホスピス、応援ナースなど、様々な分野を経験。その中で、患者はもちろん支える家族やスタッフも心に葛藤や不安を抱えていること、自分が満たされていないと、与えることは出来ないと気づき心のありかたに興味を持つようになる。ヒプノセラピスト・レイキマスター・逆視道認定講師など資格を所得し心の学びを深める。自分の心に従い看護師をしながら新しい働き方を見つけるためチャレンジ中。
趣味は韓国旅行。一か月ほど現地で暮らした経験をもつ、好奇心あふれる行動派ナース。
https://note.com/ysmicky