皆さん、オレンジリボン運動をご存じでしょうか? 乳がんの早期発見、早期治療を目指したピンクリボンは有名でしょう。一方でオレンジリボンとは、児童虐待防止のシンボルマークであり、児童の虐待をなくすことを呼びかける運動です。11月は児童虐待防止活動月間となっています。
今回は、児童虐待防止への思いや現在働いている乳児院について解説します。
看護師として児童虐待防止活動に関わるきっかけ
私は、もともと高校生の頃から「児童虐待防止について活動したい」という思いがあり、大学では看護師免許の他に、地域で働ける保健師や学校教育に関われる養護教諭1種免許も取得しました。そして、大学病院の小児科で働いていた時に、虐待の疑いで入院してきた男の子と出会ったのです。その男の子との出会いがきっかけで、虐待されている、あるいは虐待が疑われる子どもたちとより深く接したうえでケアしたい!と思い、現在は乳児院で働いています。
乳児院について
乳児院について馴染みのない人がいるかもしれません。乳児院とは0歳から就学前の子どもが入所する施設です。とはいえ実際のところ、新生児をはじめ0才から1~2歳の子どもたちが多く入所しています。家庭環境が整えば退所できますが、難しい場合は里親に繋げたり、2、3歳頃から児童養護施設に行く準備を始めたりするなど次のステージに移っていきます。
入所理由はさまざまです。一般的に家族と一緒に暮らすことができない子どもたちが対象ですが、近年は虐待や虐待疑いで保護された子どものたち入所が多い傾向です。具体的に「望まない妊娠」や若くして親となり養育できない、親自身の病気や産後うつ、育児疲れ、我が子に障害があって養育できない、経済的な理由などが挙げられます。最近は外国籍の子どもたちも多く入所しています。病院や近隣住民の通報から警察や児童相談所を経由して入所するケースもあります。
乳児院看護師の働きとは
子どもたちにとって乳児院は、家庭に代わる「生活の場」です。子どもたちが乳児院に入所する理由はさまざまですが、入所した背景を加味しながら精神面や身体面に対してケアすることが大切です。また保育士やその他の専門職と共に、子どもたちが「安心・安全」に過ごせて健康的に成長するためにサポートする必要があります。実際に子どもたちと関わり、毎日の保育(食事・清潔・睡眠など生活の援助)に携わったり、子どもたちや職員の健康を管理したりしています。また「医務」としてより専門的に働く場合もあるのです。
「産まれてすぐゴミ箱に捨てられていた」といったケースもあり「一歩間違っていたら命を失っていたかもしれない」子どもたちの満面の笑みを見て抱きしめた時や、子どもたちの成長を見るたびに、この仕事をしていて良かったと思えます。
身近な虐待
望んで授かったとしても、産後の忙しさやワンオペ育児に疲れ果て「泣き続ける我が子から離れたくなった」「つい怒鳴って手が出てしまった」など、虐待に近しい状態になることはどこの家庭でも起こりうるものです。家庭の話はプライベートな内容であり話しにくいかもしれませんが、子育て中の方は思い詰めず、周囲に助けを求めて下さいね。地域の子育て支援センター、保健所、小児科など気軽にご相談ください。また、身近な方やふいにすれ違った親子、ご近所の様子で「あれ?」と思ったら、児童相談所や警察にご連絡を!あなたの直感や気づきが子どもたちの命を救うことに繋がります。
まとめ
児童虐待防止には政治、行政、専門職だけではなく、一般の方々のほんの少しの気遣いや声かけが必要です! 令和5年はアイドル事務所の性加害問題が話題になりましたが、もし性加害を含む虐待行為を知っていたのに見て見ぬふりをしていたとしたら、それはネグレクト(教育の放棄・怠慢)にあたります。どうか、無関心にならず共に考えて行動する機会になれば嬉しい限りです!
負の連鎖ではなく、優しさの輪が広がりますように...
ライタープロフィール
【あかね渉】ナースLab認定ライター
熊本出身、ナース歴14年目。都内大学病院で成人病棟と小児科で消化器、循環器、呼吸器など内科全般、血液腫瘍内科を経て、検査入院から骨髄移植、緩和ケア、お看取りまで経験。さまざまな子どもたちや家族をケアしていく中で、高校生の頃から抱いていた『児童虐待防止活動』に注力したい気持ちが高まり、現在は乳児院で勤務する。患者さんや子どもたちの健康を守るため、まずは自分が生き生きと健康でいる必要がある!という思いからBODYMAKEや趣味の推し活を楽しんでいる。発信のためのコンテスト出場やライターとしても活動中!
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