皮膚をみると放射線性皮膚炎のリスクが予想できる
放射線治療の副作用の一つに放射線性皮膚炎があります。放射線性皮膚炎とは、放射線治療を受けた部位の皮膚が炎症を起こすことです。放射線を照射する量や部位、患者さんの皮膚の状態などが影響して皮膚炎が生じます。たくさんの患者さんと関わっていると、患者さんの元々の皮膚の性質から放射線性皮膚炎になりやすいかどうか、予測できるようになってきます。放射線治療開始前の面談では、皮膚の性質を確認し放射線性皮膚炎を予防する方法を把握することが大切です。
皮膚につける印が消えていないか敏感になる
放射線治療の開始前、放射線を照射する範囲や方向を決めるために治療計画用のCTを撮影します。CT撮影時に、体幹や肩にマーカーペンで直接線を書くことがあります。実際の治療時の体勢を再現するためには、とても大切な印なのです。毎日印が消えていないか確認するとともに「消さないように気をつけてください!」と、患者さんに口を酸っぱくして伝えてしまいます。
患者さんの通院スケジュールで月日の流れを感じる

放射線治療は一定期間の継続が必要です。疾患や病状によって、医師と医学物理士が通院スケジュールを立てます。計画を立て決定するのです。「毎週月曜から金曜までの5日間、計33回」など治療が長期間となる場合、7週にわたって患者さんと関わります。治療が開始するときは患者さんと「先は長いね」と話していたのに、気がつけば治療終了を迎え「もうそんな時期か」と月日の流れを感じるものです。
安静を保てるかどうか、アセスメントと支援のプロになれる
放射線治療中に体を動かしてしまうと、照射する場所がずれて周囲の正常組織に放射線があたってしまいます。事前に放射線技師が正しいポジショニングと画像を照合しています。計画通りに放射線をあてるためには、照射中は体を動かさないことが大事です。そのため治療する約15分~30分の間動かずにいられるか、疼痛コントロールや呼吸管理など必要なケアを提供できるか見極めるプロになります。
突然の機械の故障に振り回される
放射線治療の機械は、とても高度で精密です。放射線技師は毎日欠かさず、機械が正常に作動するか確認しメンテナンスしていますが、年に数回機械の故障がみられます。スタッフで対応できない不具合が起こると、メーカーに連絡しエンジニアの方に修理してもらうまで待つしかありません。そうなると治療時間の組み直しや、患者さんへの説明・対応に追われて大変な1日になるのです。そのため「機械の調子が悪い」と聞くとヒヤヒヤしてしまいます。
放射線治療の対象疾患は多種多様
放射線治療は、主にがんに対して用いられます。臓器のがんや血液疾患、転移性腫瘍など、がんだけでなくケロイド手術後の再発予防など、放射線治療の対象疾患は多種にわたります。化学療法と放射線治療を同時進行することもあるため、それぞれの患者さんに合わせて看護するには常に知識のアップグレードが必要です。放射線治療部門で働き始めたときは「こんな部位にも放射線を照射するのか」と驚いたものです。
放射線治療看護師は患者さんと家族の応援団長
放射線治療は、あらかじめ決められた計画通りに最後まで治療を完了させることで、治療の効果が期待できます。ほとんどの患者さんが外来通院で治療するため、休まず通院できるようなサポートが必要です。長期にわたる治療内容で、なかには毎日の通院や副作用が辛くてやめたくなる患者さんもいます。最後まで治療できるように、看護師は症状のコントロールに努め、メンタル面に対するケアが大切です。看護師は、患者さんや家族の応援団長のような役割だと感じています。
まとめ
放射線治療は主に外来通院で実施されるため、副作用の症状が出た場合、患者さん自身やご家族が対処しなければなりません。創意工夫してケアできる方法を提案したり、限られた時間で不安に寄り添ってサポートしたりする力が求められます。一方で、一緒に試行錯誤しながら無事に最後まで治療されて帰る姿を見届けるときが、やりがいを感じる瞬間です。また、基本的に夜勤はないので子育て世代の看護師にもおすすめできます。この記事を読んで、放射線治療看護師に興味を持ってもらえると嬉しい限りです。
ライタープロフィール
【西村ゆり】ナースLab認定ライター
急性期病院の病棟や放射線治療部門、外来検査部門、訪問看護、緩和ケアクリニックを経験。2021年からWebライターとして3冊の電子書籍を出版、Kindleプロデュースも手がける。
X(旧Twitter):https://x.com/lilycon_nurse
看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」