世界の行きたい国ランキング上位に日本が入るのはほぼ毎年のことなのに、外国人患者さんの対応に苦手意識をもっている方は多いのではないでしょうか。今回は、外国人患者さんともっとコミュニケーションがとれて、お互いに安心できるように、誰でもできる対応方法について私の失敗談も含めてお話します。
1.笑顔で「こんにちは」ゆっくり日本語で挨拶しよう
外国人と思われる患者さん、増えていますよね。でも本当に全員外国の方でしょうか?実は、彼ら全員が旅行者や一時滞在者とは限りません。多様化した現在では、両親が外国人でも本人は日本生まれの日本育ちということも珍しくありません。長期就労や国際結婚で日本にずっと住んでいる方も多いです。名前や見た目で「あ! 外国人患者さんだ」と判断せず、まずは「こんにちは」と挨拶をしてみて、その反応を見ましょう。ペラペラと日本語を話し出す人もいれば、「日本語はちょっとだけ」と言う人、「Uh…I’ve been having this stomach issue since…」と英語が急に始まる人もいます。中には日本語も英語も全く話せない方も翻訳機を片手に来院されます。まず、相手が日本語を話せるかどうか、どれくらい話せるのか判断しましょう。
私の失敗談ですが、見た目から外国人患者さんだと思って一生懸命英語で対応したところ、帰り際に流暢な日本語で「ちなみに、すごく英語上手だけど、日本語で大丈夫ですよ。もう40年くらい日本にいるから、あなたより日本語も先輩でしょ」と言われてしまったことがあります。日本語を話せると最初から教えてくれればこんな労力は必要なかったのに……と一瞬思いましたが、勝手に思い込んだのは自分なのです。
まずは「こんにちは」で確認しましょう。日本語が話せる相手に頑張って英語を話すのは、誰のためにもなりません。
2.文になってなくても大丈夫! シンプルが一番
相手に英語で話しかけられて、聞き取れなかった時は
「Do you mind speaking a little more slowly?」「Sorry, I wasn’t paying attention. Could you say that again?」なんてカッコよくきめなくてもいいのです。
「Pardon?」の一言で、解決です。
明日10時に再来して、傷の状態を診せてくださいと言うのも、「Do you think you can come see the doctor tomorrow again around 10AM for making sure that the wound is in a good condition? 」なんて言わなくても
「come back tomorrow 10AM. check」
といって傷を指差せば全く問題なく伝わりますし、かなりの時短です。大事な単語を並べれば文になっていなくても大丈夫。必要なのはカッコいい英語ではなく、伝わる英語です。
私たちは日本に住む日本人です。心配しなくても完璧な英会話なんて、最初から期待されていません。外国人患者さんが来たからといって、失敗を怖がって逃げないでくださいね。彼らはあなたの助けを必要としています。
3.ドンと構えて、安心感を与えましょう
外国人患者さんの対応は、慣れていないと緊張しますよね。その緊張は、顔や雰囲気で相手に伝わっています。もしや大きな病気じゃないか、手術になったらどうしようと思って来院している患者さんは、緊張したあなたを見るとパニックになります。
知っている方も多いと思いますが、英語を全然話せてないのになぜか伝わる有名芸人さんがいますよね。彼からは、話せないからどうしようという不安は全く感じません。話せなくても堂々と笑顔で次々に話しかけるのです。語彙力がなくても、いろんなアプローチを駆使して伝わっちゃうのですからコミュニケーション能力がかなり高いといえます。流暢に話せなくても伝わればいいので、緊張せず、私がついているから安心してねくらいの気持ちで対応しましょう。
海外の素敵なドクターのお話です。私が留学中に肺炎になった時、とってもシンプルな英語でジェスチャーをいっぱい使って一生懸命伝えようとしてくれた医師がいました。帰る時まで腕を大きく広げて、大丈夫、安心してと大きな笑顔を見せてくれました。その医師の伝えようとする姿勢と余裕のある態度が、呼吸が苦しく、医療英語なんて全くわからない私の不安を払拭し、包み込むような暖かさで安心感をくれました。
・ただ注意したいジェスチャーも
ジェスチャーってすごく便利ですが、ちょっとした注意が必要です。レントゲンをとるからこっちについてきてねと伝えたい時、こっちこっちと手のひらを下にして手招きしていませんか? その動作、あっちへ行けという意味になるので気をつけてください。
・「痛い、痛い」には訳がある
全員ではないですが、基本的に外国人患者さんは痛みに弱いことが多いです。オペ患者さんのルートキープは早めにすることをおすすめします。疼痛コントロールも難渋することが多いです。海外では、日本と比べると鎮痛薬の一回投与量が多かったり、オピオイドを日本よりも容易に投与したりするからです。疼痛の訴えが強い時には、話を傾聴したり、温冷罨法を駆使したりして寄り添ってあげてくださいね。
まとめ
いかがでしたか、外国人患者さんの看護のハードルは下がりましたか? 英語がペラペラ話せても真顔の人より、つたない英語でも表現豊かにコミュニケーションをとってくれる人の方が信頼できるかなと私は思っています。ただ、余裕がある方は医療現場で使える英語フレーズもぜひ勉強してみてくださいね。
ライタープロフィール
【穂積育民】ナースLab認定ライター
愛知県出身。国際関係の大学在学中にカナダでワーホリ&バックパッカーの旅を経験。その後、看護師の道へ。小児、婦人科、腎臓内科、循環器ナース。応援ナースを楽しんだり、英語を活かせる医療機関で非常勤として働きつつ通信で勉強したり、自由な働き方を模索中。
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