「あー病院に行くの、シンドイ。いっそお家で看護師できないかなぁ...?」
なんて、思った事ありませんか?
通勤途中「自宅で看護師として働きたいと思っているの、私だけかな?...怠け者だわ...。」と思っていた30年前。
そのころの看護師は、病院や施設で働くことが当たり前で、副業もパラレルキャリアもない時代でした。しかし、令和の時代では看護師のキャリアは多様化しているため、あの頃抱いていた私の夢は実現したのです。
この記事では、怠け者の私が、看護師資格を活かしてパラレルキャリアを築いた方法を、2回にわたりご紹介します。
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアは、オーストリア人経営学者のピーター・ファーディナンド・ドラッカーによって提唱されました。具体的に、本業を持ちながら他の企業に勤めたり、起業したり、ボランティアや社会貢献活動をしたりするなどが挙げられます。また、スキルアップや自己実現の達成など、必ずしも収入につながらない活動も含まれます。
1.看護師の資格は「患者のため」だけなの?
基礎教育を終えて看護師の資格を取得すると、みんな一斉に病院や施設に就職して、当たり前のように看護を提供しています。そう、看護師なら看護するのは当たり前です。だって、看護の資格は、患者に看護を提供するためのものであり、看護を実践するための証明書のようなものだから...。保助看法にも「看護師」とは「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」(保健師助産師看護師法第5条)ってありますしね。
けれど、みなさんはこんな風に考えた事ありませんか?
「看護の資格は、私の豊かな人生のために活かす!」
ちょっとした発想の転換ですが「資格を活かしてどうやって生きていくか」はライフキャリアという生き方をベースにしたキャリアの考え方です。
看護師のあなたには、軸を同じくする2つのキャリアがあります。ライフキャリアという生き方のキャリアと、ライフキャリアの中の一部であるワークキャリアという働き方のキャリアです。ですから、看護師であるあなたは「あなたの人生の要素のひとつ」でしかありません。看護師の資格を柔軟に活かして、ぜひ、豊かなキャリアを歩んでほしいと思っています。
そのために「看護師は看護(だけ)をする人」という常識を、疑ってみることをぜひおすすめします。
2.看護師経験しかないけど他に何ができるの??
私は、今までに1000人以上の看護師さんとお会いして、看護の経験をお聴きしてきました。これまでの看護師経験の中で印象深いことは、かなりの多くの人が「当たり前のことしかしてないのです。」とか「自分の得意なことは特にないのです。」とおっしゃったことです。謙遜しているのかもしれませんが、ほとんどの人が、自分のしている素敵な看護経験を、自分のキャリアとして自己表現できていないと感じたのです。
例えば、看護師の友人と喫茶店に行って、おいしいスイーツを食べながら会話に夢中になっていても、お隣の客が注文した料理や食べ方、しぐさ、何となく聞こえる会話のストロークから、付き合いだしてすぐのカップルだと分かる。特に示し合わせてもいないのに、友人の看護師も同じように感じている。そして、お隣の客が席を立った後に、2人の初々しさについて温かく話す、といった経験はありませんか?
これ、2人とも看護師でないと、なかなか成り立たないことなのです。
看護師は、観察した情報を主観と客観、そこからの推測とに区別して認知し、知識と経験を基に分析して判断・行動につなげることができるため、メタ認知力が高いのです。
さらに、自分たちの会話に集中しながらも、お隣を観察するというマルチタスク能力にも長けています。人に好意的な関心があるからこその、すばらしい観察力ですね。
患者を観察して看護過程を展開し、看護を実践して評価するまでの過程はまさにビジネスをする上で大事なP D C Aサイクルを回す能力そのものです。
看護師だから当たり前でなく「看護師だからすごい!」と認識すること、私にはアセスメント力がある、私は観察力が優れている、相手の思いが手に取るようにわかるなど、看護を要素ごとに分解しながら、あなたの得意なことや才能をぜひ見出して、自己表現して欲しいのです。それがパラレルキャリアを築く、最初の一歩になるかと思います。
まとめ
みなさんが当たり前にしている看護の能力って、実は「すごい」ということに気が付いて頂けましたか?周囲が看護師ばかりだと、他の看護師と比べて「私はまだまだ」とか思っているかもしれません。現場の看護師の能力の高さと患者を思うマインドはとても素晴らしく、ビジネスにつながる原石です。
ぜひ、そのことを知って、看護の資格をあなたに活かす、看護師のパラレルキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。
ライタープロフィール
【湯本 枝里子】一般社団法人メンターナース代表理事
大学病院の看護師から看護専門学校の専任教員を経て、看護師専門のキャリアコンサルタントとして活動。現在は、一般社団法人メンターナースの代表理事として病院へメンターシップを導入し、看護師との面談実績は1,000名以上。
自身が幾度となく看護に疲弊した経験から、看護師は、自分軸となる人生設計「キャリアデザイン」を描く大切さを実感。看護師の人生を豊かにするために資格を活かす、キャリア構築の普及に尽力している。