1.臨床でのスペシャリストを目指す
「クリニカルナーススペシャリスト ( Clinical Nurse Specialist: CNS ) 」

CNSは臨床の現場でシニアな役割を担っています。病棟の正看護師と同じように患者を受け持ち、交代勤務をします。イメージ的にはその病棟の主任さんクラスです。病棟のことを何でも知っていて、専門的知識があり、頼れる存在です。
病院によって申請できる基準は異なりますが、私の職場では自分の専門領域の卒後プログラムを終えます。または5年以上その領域にいると申請ができます。私は現在、血液内科病棟で2年経ったので、卒後プログラムを取得し今年の終わりには申請ができるようになります。シドニー があるNSW州の正看護師の給与は、規定により8年目までしか自動的にお給料が上がりません。そのため、向上心のある看護師はこのような資格を申請して取ることが多いです。
※クリニカルナースコンサルタント ( Clinical Nurse Consultant: CNC )
CNSよりもシニアな役割です。医師と共に患者の治療方針や入院のスケジュールを決めるなど、重要な役割を担っています。病棟ではなく、自分のオフィスを持ち必要な時に病棟へ来て患者の指導やカンファレンスに参加します。普段はオフィスにいて医師とのやりとりや病院の規制・規約の作成をしているイメージです。CNSになるには卒後プログラムで自分の専門科を修了していることと必要な経験年数が問われることが多いです。
2.看護師を指導する看護師になる
「クリニカルナースエデュケーター ( Clinical Nurse Educator: CNE ) 」

CNEとは教育係のことです。公立病院の各病棟には専任のCNEが最低1人は在籍しているため、手厚いサポートが受けられます。対象は看護学生から新卒看護師、中途採用者など、教育を必要とする全ての職員を担当しています。例えば、新卒看護師への病棟オリエンテーション、技術指導・アセスメント、勉強会を企画・運営など幅広く携わっています。CNEになるにはカレッジや大学院が提供している卒後プログラム=Post graduate certificate を修了していることが条件ですが、コースは教育系でなくても可能です。例えば、腫瘍内科病棟の教育係ならがん看護の卒後コースを終えていてもなることができます。卒後コースは1年間のパートタイムから2年フルタイムの大学院修士まで様々です。
3.管理者としてリーダーになる「病棟師長」

一番身近なリーダーといえば師長です。シフトのリーダーをやるようになると病棟の管理的な役割に興味が出てくる人がいます。師長が長期休暇の時は、希望者が師長の代理をすることができます。その経験から正式に師長になる人が多いように思います。師長になるための特別な資格は不要ですが、リーダーシップや医療マネージメントなどのコースを取っていると有利です。
現在の師長さんは、とても気さくで話しやすいです。スタッフ皆を常に見てくれるので、フォローに入ってくれることが多いです。師長でありながらもシニアの看護師がいないときには臨床現場に入って助けてくれることもあります。さすがに師長さんに見られながらの処置は緊張しますが、良いフィードバックをくれるので役立つことが多いです。
4.キャリアアップするための環境

オーストラリアは日本よりも働きながらキャリアアップするための環境が整っていると思います。現在私は、フルタイムで働きながら、パートタイムで大学院へ通っています。日本で働いていた時は休み希望が取りにくく、残業で疲弊してしまい、勉強する気力はあまりなかったように思います。今は、同じように大学院で学ぶ人も多く、中には子育て中の人もいるので、「頑張ろう!」と自然にモチベーションが上がります。
①自分で決めた領域で働くことができる
日本で働いていた時は、希望の科が選べなかったり、異動があったりすることが頻繁にありました。一方、オーストラリアでは、自分の希望・経験が優先されますし、例えば、消化器外科病棟に就職した場合、自分が退職するまで同じ病棟で働くことができます。その分、消化器外科という専門的な知識を増やすことができます。その経験が今後に活かせるので、将来のキャリア選択が立てやすい環境にあると思います。また、他の領域へ興味が出たらすぐに転職することもできるのがオーストラリアの働き方のいいところです。 日本とは違い、転職はマイナスではなくプラスに捉えられます。それは、様々な分野での経験が次の仕事に活かせるからです。また、新卒看護師の中には20代後半や30代の方がいて看護の勉強をする前は全く別の仕事をしていたという人が少なくありません。
②大学院で学ぶための有給がある
公立病院で働く看護師は、大学院で勉強するために特別な勉強休暇が設けられています。年休を使うことなく、休暇がもらえるというのはありがたいです。もちろん、コースの期間や授業日によっては全てが有給になるとは限りませんが、このような制度があることで病院外でも勉強しやすい環境にあるのは間違いありません。私の職場の師長はとても協力的で師長自身も大学院での勉強をしていたこともあり、シフトをうまく組んでくれるのでとても助かっています。
5.まとめ

海外看護師のキャリアアップの方法として主に臨床系・指導系・管理の3つをご紹介させていただきました。
皆さんのキャリアアップの選択肢として、ぜひ海外看護師も視野に入れてもらえると嬉しいです。
私自身も海外看護師として働きながら勉強している身ですが、いつまでもキャリアアップを目指して自分を高めていける看護師になりたいです。
【Nozomi】ナースLab認定ライター
群馬県出身。日豪で正看護師資格を持つ。日本では総合病院で3年働き、夢である海外で看護師になるためオーストラリアへ留学。初心者レベルから英語を始めて留学から3年半後に看護師登録が完了。現在はシドニー の公立病院で働きながら、自身の経験を活かし看護師のための留学サポートも行っている。今年は大学院にも通い始めて、がん看護のクリニカルナーススペシャリストを目指す。アンフェミエコラム読者の方にもぜひ海外留学に挑戦してほしいです。
