
それから少しして、患者さんが亡くなった後、息子さんから「シュークリームを渡したら困らせてしまったと母から聞きましたよ」と笑って伝えてもらいました。
食べられない状態、末期がん、悪液質になっていたと思います。もしかしたら余命についても感じていたと思います。辛い中でも私を気遣ってくださった患者さんの優しさに、「ありがとう」を伝えることすらできなかった後悔がまだ私の中に残っています。
患者さんの優しさを受け取る
患者さんから何か頂いた時は丁寧にお断りするように言われていますよね。新人の私は患者さんの優しさに思わず泣いてしまい、逃げるように患者さんの元を離れてしまい、看護師としての対応もできていません。
「ありがとうございます。息子さんからの差し入れ、もったいないですよね。でも患者さんから何かいただくわけにいかないのですよ」と断った上で、「食べられなくて辛いですか?」と続ければ、今の身体症状をどのように感じているのかを確認することができたはずです。
「息子さん優しい方ですよね。こんな素敵な息子さん、どうやって育てたのですか?」と患者さんの歴史を振り返れば、価値観や大切にしていることを知る機会やコミュニケーションのきっかけにできたかもしれません。
看護師の経験を重ねた今、もしかしたら、患者さんの優しさを受け取ることが、「若い人を励ます」という彼女の社会的な役割を遂行することにつながったのかもしれないと考えることもできます。
当時の私に「逃げることなく、その場で泣けばいい。それも看護にできたかもしれない」と伝えたいです。そして「続けていけば泣かずにスイーツで夜勤の疲れを癒し、なんとかやれるようになるよ」とも。
リフレーミングコラムとは?
このコラムでは、看護職としてお仕事をしている皆様のなかで、心に残るエピソード、もっと上手く対処したかった悔しい経験、今だからクスッと笑える話を共有し、前向きに昇華したいと考えています。日々積み重なっている思いを同じ職種だからこそ分かち合える「看護」という共通言語でつづり、皆様にとって何かの助けになることを願っています。
~代筆ライター~
【西山妙子 (にしやまたえこ)】ナースLab認定ライター
総合病院の外科・脳外科病棟、ICU、大学病院手術室に勤務。結婚、子育て療育を経て訪問看護の道へ。病院の業務で疲弊しないでほしいと看護師の横のつながりや、新しい看護師のライフスタイルの提案を行うナースのためのオンラインサロン「ナースライフバランス研究室(ナースlab) 」を2017年10月より企画運営(現会員数約1000名以上)
マインヘルスケア株式会社代表取締役
Facebookにて「今日のおかずはなんだろうな」料理ライブ配信
インスタグラム(#朝活ナース 訪問看護)
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ナースライフバランス研究室(オンラインサロン)
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